[出典] "Unraveling intratumoral heterogeneity through high-sensitivity single-cell mutational analysis and parallel RNA-sequencing" Rodriguez-Meira A [..] Mead AJ. Mol Cell. 2019-02-12. (bioRxiv. 2018-11-28).
背景
- 癌のより精密な個別化医療を実現するには、腫瘍組織内の細胞の多様性 (intratumor heterogeneity, ITH)を理解する必要がある。これまでに最もよく解析されてきたITHは、次世代シーケンシング (NGS)技術による癌細胞集団と一細胞の双方のレベルでのゲノムDNA (gDNA)変異である。しかし、ITHとその作用を把握するには、体細胞変異を超えた要素も解明する必要がある。例えば、腫瘍進化の源であり再発をもたらす癌幹細胞 (cancer stem cells, CSCs)である。
- ITHの機能解析には、ゲノムの不均一性 (gDNAの変異)と、トランスクリプトームの不均一性を対応づけることが有用である。gDNAからの転写物であるmRNAを対象とする一細胞RNAシーケンシング (scRNA-seq)による腫瘍組織内の細胞型同定はすでに普及し、幹細胞らしさ (stemness)のシグネチャーや腫瘍細胞の進化の階層に関する知見も得られ、トランスクリプトームの不均一性が明らかにされてきた。しかし、これまでのscRNA-seq実験は、変異のホットスポットを網羅することが困難なこと、アレルドロップアウト(ADO)率が高いといった課題を伴っていた。
概要
- Uniersity of OxfordとKarolinska Institutet (兼任)の研究グループは今回、scRNA-seqをもとにSMART-seq+を開発して遺伝子発現の検出感度を改善したが、ADO率の改善には至らなかった。そこでさらに、同一細胞のgRNAとmRNAを解析し、かつ、ADOを劇的に低減しノンコーディング変異の検出も可能にするTARGET-seq法を開発した (原論文Fig. 1引用下図参照)。

- TARGET-seqにより、骨髄増殖性腫瘍myeloproliferative neoplasm (MPN)患者由来の幹細胞・前駆細胞を対象として、ゲノムの不均一性 とトランスクリプトームの不均一性を明らかにし、遺伝的に異なったサブクローンの分子シグネチャーを同定した。
- また、TARGET-seqにより患者由来の野生型 (腫瘍変異を伴わない)細胞と健常者由来の野生型細胞の転写プロファイルが異なり、前者ではTNFαならびにIFNのシグナル伝達と相関する炎症性遺伝子がエンリッチされていることを見出した。
- 現行バージョンの TARGET-seqは、ただし、それ自身では変異の発見を行わず、既報の変異に依存しており、より複雑な変異が関与する腫瘍におけるITH解析には、拡充が必要である。
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