[出典] "Targeting DDR2 enhances tumor response to anti–PD-1 immunotherapy" Tu MM [..] Theodorescu D. Sci Adv. 2019-02-20.
  • 癌の抗PD-1抗体療法は強力である一方で、奏功する患者が限られることから、他の薬剤との併用療法や、患者を層別化するためのバイオマーカーの探索とコンパニオン診断薬の開発などの研究開発が精力的に進められている。
  • 抗PD-1抗体医薬と他剤の併用療法の治験は2009年から始まり、2017年には1,100件を超えた。一方で、併用療法の前臨床試験のデータ蓄積が遅れており、また、併用の組み合わせは膨大になることから、患者集団に最適な併用を合理的に発見する手法が望まれる。
  • University of Colorado Anschutz Medical Campus, Bristol-Myers Squibb, Cedars-Sinai Medical Centerなどの研究グループは今回、その阻害によって、抗PD-1抗体医薬の単独療法および抗癌剤との併用療法の効用を高める遺伝子を探索した。
  • 研究グループは、新たに設計・構築したプール型shRNAライブラリーに基づき、これも新たに作出した膀胱癌モデルマウス由来の細胞株 (NA13)をスクリーンし、抗PD-1免疫療法に対する感受性を最も亢進する標的遺伝子として、DDR2を同定した (原論文Fig.1 引用下図左参照:DDR2はオレンジ色表示)。DDR2は癌細胞の増殖、浸潤、転移に関与するコラーゲン受容体型チロシンキナーゼである。
  • 次いで、DDR2欠損がモデルマウス (膀胱癌、乳癌、大腸癌、肉腫およびメラノーマ)の抗PD-1免疫療法に対する感受性を亢進することを確認した (原論文Fig. 2引用上図右の(I)図を参照)。
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  • また、抗PD-1とBristol-Myers Squibbのチロシンキナーゼ阻害剤抗癌剤ダサチニブの併用療法が腫瘍量 (tumor load)を低減することを見出した (原論文Fig. 4引用上図右の(D)図を参照)。
  • さらに、RNA-seqとCyTOF解析から、DDR2を欠損した腫瘍細胞におけるCD8陽性T細胞数が多いことを見出した。
  • 今回の結果は、Bristol-Myers Squibbが進めてきたオプジーボ (ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体ニボルマブとダサチニブの併用療法の治験FRACTION-Lungを進めている (NCT02750514)に資すると共に、コラーゲン・シグナル伝達を標的とすることで免疫チェックポイント阻害剤の効用を高める戦略を示唆した。