1. DNA組み込みを起こすことなく自然のままの植物細胞への安定なポリペプチド送達を可能とするナノ材料を開発
[出典] "High aspect ratio nanomaterials enable delivery of functional genetic material without DNA integration in mature plants" Demirer GS [..] Landry  MP. Nat Nanotechnol. 2019-02-25. (bioRxiv. 2017-08-22)
  • 植物細胞への生体分子のデリバリには細胞壁が立ち塞がる。これまでの植物細胞へのデリバリ法は、限られた宿主域、低い形質転換効率、組織損傷、宿主ゲノムへのDNA組み込みといった課題を伴っていた。UC Berkeleyの研究グループは今回、アスペクト比が高いカーボンナノチューブ (carbon nanotube, CNT)を利用することでを利用することでこれらの課題を解決した。
  • Nicotiana benthamiana (Nb, ベンサミアナタバコ)、Eruca sativa (arugula, ルッコラ)、Triticum aestivum (コムギ) およびGossypium hirsutum (ワタ)  の葉、ならびに、ルッコラのプトロプラストに、CNTでDNAを送達し、タンパク質発現を実現した。ルッコラ・プロトプラストの形質転換効率は85%であった。また、Nbの葉にCNTを介してsiRNAを送達し、遺伝子サイレンシング効率95%を達成した。
  • 植物細胞壁のサイズ排除限界 ( ~ 20 nm)を超えないCNTsは、任意の植物種の細胞へ、自然のまま損傷を与えることなく遺伝物質を送達することを可能とするだけでなく、また、ポリヌクレオチドをヌクレアーゼによる分解から保護することも明らかになった。
  • 本研究ではその実証実験は行われなかったが、CRISPR/Cas9システムの送達への応用が考えられる。
2. CRISPR/Cas9を介した哺乳類細胞におけるin situタンパク質タギング
[出典] "CRISPR/Cas9-mediated generic protein tagging in mammalian cells" Thöne FMB, Kurrle NS, von Melchner H, Schnütgen F. Methods. 2019-02-21.
  • Goethe Universityの研究チームは今回、CRISPR/Cas9と相同アームが不要なノックインを実現するツールキットを開発しHEK293細胞において実証した。このツールキットは、本ブログでは「CRISPR関連文献メモ_2015/12/25 [第5項] 遺伝子タギングの効率化:Tilmann Bürckstümmer (Horizon Genomics)」にて紹介したLacknerら (Nat Commun, 2015)開発した手法にもとづいているが、参考として、当該論文Figure 1を下図に引用した。 2019-02-26 21.53.49
  • 本論文では上図のTAG部分が、hygro-P2A-nLapとなっている。ここで、hygroはハイグロマイシン耐性遺伝子、nLAPはEGFPに基づくN-terminal “localization and affinity purification”タグを意味し、hygroを組み込むことで、先行論文で必要であった限界希釈と大量のクローンのFACSソーティングを不要とした。
  • このツールキットを利用して、HEK293細胞におけるmTORC1シグナル伝達パスウエイ関連タンパク質のタンパク質間相互作用と局在の解析を試み、タグ付けしたタンパク質が生理条件下で知られている振る舞いを示すことを確認した。すなわち、このタギング法は、タンパク質本来の発現と機能には影響を与えなかった。
3. [プロトコル]遺伝子改変マウスモデルを作出するためのマウスES細胞におけるCRISPR/Cas9ゲノム編集法
[出典] PROTOCOL "CRISPR/Cas9-Assisted Genome Editing in Murine Embryonic Stem Cells" Gruzdev A, Scott GJ, Hagler TB, Ray MK. In: Allen I. (eds) Mouse Models of Innate Immunity. Methods in Molecular Biology 2019-02-24.

4. [プロトコル] マウス一細胞胚jへのCRISPR/Cas9システム送達を介したゲノム編集によるマウスモデル作出法
[出典] PROTOCOL "Genome Editing in Mouse Embryos with CRISPR/Cas9" Scott GJ, Gruzdev A. In: Allen I. (eds) Mouse Models of Innate Immunity. Methods in Molecular Biology. 2019-02-24.