(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/05/25)
- Corresponding author: 小川誠司(京都大学)
- 京都大学、東京大学ならびに北海道大学の研究チームは、PD-L1 遺伝子の3’-UTRの欠損が、がん細胞の免疫回避の一端を担う分子機構を明らかにし、PD-L1/PD-1阻害薬の効果を予測するための新たなバイオマーカー開発への扉を開いた。
- がん細胞の免疫回避機能を標的とするPD-L1/PD-1阻害剤は劇的な効果を示す一方で、適用対象のがんであっても奏効する率は20%程度である。このため、投与前に効果を予測するコンパニオン診断(Companion diagnostics, CDx)薬が開発・認可されている(“Predictive biomarkers for checkpoints, first tests approved” Nat Biotechnol. 2015).
- これまでのCDx薬は免疫チェックポイント阻害剤ごとに開発され(*)判定基準も様々であることから、標準化を目指した互換性の検証プロジェクトが進行中である。
(*) Dako 22C3/Keytruda®(pembrolizumab);Dako 28-8/Opdivo®(nivolumab); Ventana SP142/Tecentriq™(atezolizumab);Ventana SP263/Durvalumab
- 成人T細胞白血病リンパ腫の27%で、染色体の欠失、逆位、転座、重複などの構造異常によるPD-L1 遺伝子の3’-UTR欠損が生じ、PD-L1の発現が異常に亢進していた。
- The Cancer Genome Atlas (TCGA)登録の33種類のがん由来10,210サンプルのデータを解析。PD-L1 3’-UTR欠損(truncation)存在する膀胱がん、子宮頸がん、結腸がん、B 細胞リンパ腫、食道がん、腎がん、頭頸部がん、肺腺がん、直腸がん、悪性黒色腫、胃がん、子宮体がんの12 種類のがん種31サンプルを同定。その一部にPD-L1 遺伝子へのウイルスゲノムの組み込みによる3’-UTR欠損の存在も同定。
- CRISPR/Cas9技術によってPD-L1 3’-UTRに欠失または逆位を導入したヒトとマウスの細胞株において、PD-L1の発現が亢進し、また、PD-L1 の転写物が正常細胞に対してより安定。
- PD-L1 3’-UTRを欠損させたマウスのリンパ腫由来EG7-OVA細胞は皮下移植したマウスにおいて、アジュバントによる免疫誘導を回避するが、アジュバントに抗PD-L1抗体を併用すると免疫応答。
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