1. [プレビュー] CRISPR-Casのミニマムシステム
[出典] PREVIEW "CRISPR-Cas Systems Reduced to a Minimum" Almendros C, Kieper SN, Brouns SJJ. Mol Cell 2019-02-21;73(4):641-642.
- 2019年2月21日Molecular cell誌に掲載された、Cas1タンパク質単独でアダプテーションを実現している二種類のタイプV CRISPR-Casシステムを発見したWrightらの論文*と、小型でPAMとしてNNNNCCと単純なCCのジヌクレオチドを認識する髄膜炎菌由来のCRISPR-Casシステムを発見したEdrakiらの論文**をプレビュー
- 両論文は、オンライン出版時にcrisp_bioで紹介:(*) 2019-01-31 タイプV-C/D CRISPRシステムの免疫記憶はCas1単独で形成される;(**) 2018-12-22 髄膜炎菌から3拍子揃ったCas9 - コンパクト・ジニヌクレオチドPAM認識・高精度
2. 還元性分岐型エステル-アミン四元共重合体 (rBEAQs)によるCRISPR/Cas9システムの送達
[出典] "Reducible branched ester-amine quadpolymers (rBEAQs) co-delivering plasmid DNA and RNA oligonucleotides enable CRISPR/Cas9 genome editing" Rui Y, Wilson D, Sanders K, Green JJ. ACS Appl Mater Interfaces. 2019-02-22.
- DNAプラスミドとRNAオリゴヌクレオチドを共に送達可能とするナノ粒子を生分解性のプリマーで実現し、DNA-siRNAやCRISPR DNA-sgRNAの効率的送達を実現
3. E. coliのタイプI-E CRISPR/Casシステムは、獲得免疫応答システムとしてよりも内在遺伝子調節システムとして機能している
[出典] "Endogenous Gene Regulation as a Predicted Main Function of Type I-E CRISPR/Cas System in E. coli" Bozic B, Repac J, Djordjevic M (University of Belgrade). Molecules. 2019-02-21.
- E. coliのゲノムとE. coliウイルス ~230種類の配列のアライメントから始まるin silico解析から、CRISPRスペーサがファージゲノムよりも宿主ゲノムを標的する傾向が顕著であることをはじめとして、 E. coliのタイプI-E CRISPR/Casシステムが宿主遺伝子の転写調節に関与することを示唆するデータを得た。
4. DNAのトポロジーが、Cas12a (Cpf1)によるR-ループの形成とDNA鎖切断に与える影響
[出典] "The Effect of DNA Topology on Observed Rates of R-Loop Formation and DNA Strand Cleavage by CRISPR Cas12a" van Aelst K [..] Szczelkun MD. Genes. 2019-02-22.
- 単分子磁気ピンセット (magnetic tweezers, MT)を利用して、LachnospiraceaeバクテリアND2006 Cas12aによるR-ループ形成が、負のDNA超らせんのトポロジーで亢進することを見出した。また、超らせんトポロジーのプラスミドDNAの切断が、 トポロジーに依存するR-ループ形成を介して、DNAまたはニックの入った環状DNAの切断よりも50倍以上速いことを見出した。
- R-ループ関連crisp_bio記事:CRISPRメモ_2017/11/19 - 5. CRISPR-SpyCas9によるゲノム編集時のR-loop形成の動態を一分子FRET(smFRET)で解析
5. 発光タグHiBitが、CRISPRノックインが起こったヒトiPSCsの効率的スクリーニングを実現する
[出典] "Luminescent peptide tagging enables efficient screening for CRISPR-mediated knock-in in human induced pluripotent stem cells [version 1; referees: awaiting peer review]" Madsen RR, Semple RK. Wellcome Open Research 2029-02-28.
- ヒトiPSCsは、HDRを介した遺伝子ノックインの効率が著しく低く (<1%)、CRISPRシステムが誘導するDNA損傷と一細胞クローニングの繰り返しを含む最適とは言えない実験条件の影響を受けやすいことから、CRISPR技術を介してiPSCsから疾患モデルを構築することは簡単ではなく、また、通常の研究室の限度を超える経費を必要とする。
- University of Edinburghの研究グループは今回、iPSCsの機能には干渉しない膜表面タンパク質CD46の細胞外ドメインをHiBitタグで標識しておくことで、目的とする改変が起きたiPSCsをシーケンシングをすることなく、短時間で選別可能なことを示した。
- HiBiT関連crisp_bio記事:CRISPRメモ_20170918 [第1項] タンパク質を発光性ペプチドHiBiTでCRISPR標識し、細胞内動態を追跡
6. CRISPR-Clear: フィールドで利用可能な遺伝子ドライブ検出装置
[出典] "CRISPR-Clear: A Fieldable Detection Procedure for Potential CRISPR-Cas9 Gene Drive Based Bioweapons" Nieuwenweg AC [..] Saggiomo V. ChemRxiv. 2019-02-23.
- 遺伝子ドライブの場合、通常のCRISPR/Cas9遺伝子編集と異なり、Cas9が宿主ゲノムに埋め込まれていることから、宿主ゲノム内のCas9配列を増幅・検出することで、遺伝子ドライブで改変された個体を識別可能になる。
- Wageningen University and Researchなどのオランダの研究チームは、PCRよりも選択性が高く、安く、高速で、等温反応であるLAMP法と、バッテリー駆動で温度調節が可能なArduinoシステムによって、CRSIPR-Cas9遺伝子ドライブのエレメントを帯びた個体の識別を実現した。
7. [レビュー] CRISPR/Cas9によるテロメアとテロメアの研究
[出典] REVIEW "Targeting Telomeres and Telomerase: Studies in Aging and Disease Utilizing CRISPR/Cas9 Technology" Brane AC, Tollefsbol TO (University of Alabama at Birmingham). Cells. 2019-02-21.
- CRISPR/Cas9によるテロメアとテロメアーゼの可視化と編集、テロメアとテロメアーゼに関連する遺伝子スクリーンと機能解析、エピゲノム編集についてレビュー
[出典] "An RNA‐Guided Cas9 Nickase‐Based Method for Universal Isothermal DNA Amplification" Yin BC, Wang T, Liu Y, Sun HH, Ye BC. Angew Chem Int Ed Engl. 2019-02-18.
- Cas9nARの名称はCas9 nickase-based amplification reactionに由来する。Cas9nARは、sgRNA:Cas9n複合体、鎖置換型DNAポリメラーゼ (strand-displacing DNA polymerase)、Cas9nの切断標的配列を帯びたプライマー1セットで構成され、プライミング、伸張、ニッキングおよび鎖置換反応のサイクルを繰り返すことで、DNAを多段複製する。
- Cas9nARにより60分以内に20 μLの反応系における2コピーを検出可能であり (検出限界ゼプトモル)、1塩基の差異を判別可能である。
9. Cpf1 (Cas12a)を介したノックアウトで、アテローム性動脈硬化症モデルラットを作出
[出典] "Knockout rat models mimicking human atherosclerosis created by Cpf1-mediated gene targeting" Lee JG, Ha CH [..] Lee Sw, Sung YH, Baek IJ. Sci Rep. 2019-02-22.
- Cpf1による初のラットゲノム編集を試み、ApoeそしてまたはLdlrを標的とし、高効率、生殖細胞系伝達、多重遺伝子同時編集、最小限のオフターゲット作用を実証した。Apoeノックアウトラットは脂質異常と大動脈病変を呈するなど、アテローム性動脈硬化症の発症機構と早期の進行を研究するモデルとしてマウスモデルより優れていることが示した。
10. CRISPR/Cas9多重ゲノム編集により酵母におけるエタノール代謝パスウエイを最適化
[出典] "Using CRISPR/Cas9 for multiplex genome engineering to optimize the ethanol metabolic pathway in Saccharomyces cerevisiae" Liu K [..] Xue T. Biochem Eng J. 2019-02-22.
- Cpf1 (Cas12a)により、アルコールデヒドロゲナーゼ2 (ADH2), グリセロール-3-リン酸デヒドロゲナーゼ 1 (GPD1)およびアルデヒドデヒドロゲナーゼ4 (ALD4)の三種類の遺伝子単独および2遺伝子と3遺伝子のあらゆる組み合わせのノックアウトを試行し、80-100%の効率を達成し、最適条件で、エタノールの生産性を野生型の1.41倍にまで向上。
[出典] PROTOCOL "Delta Integration CRISPR-Cas (Di-CRISPR) in Saccharomyces cerevisiae" Shi S, Liang Y, Ang EL, Zhao H. In: Santos C., Ajikumar P. (eds) Microbial Metabolic Engineering. Methods in Molecular Biology. 2019-02-21.
- 酵母ゲノムにはノックインの標的になりえるδ配列が多数散在している。A*STARの研究チームは今回、δサイトを標的とするDi-CRISPR (delta integration CRISPR-Cas)プラットフォームを開発し、マーカレスかつこれまでにない高い効率でマルチコピーの大型の生合成パスウエイを酵母に組み込むプロトコルを確立した。
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