[出典] "A microRNA-inducible CRISPR–Cas9 platform serves as a microRNA sensor and cell-type-specific genome regulation tool" Wang XW, Hu LF [..] Wang Y. Nat Cell Biol. 2019-02-25.
miRNA-inducible CRISPR–Cas9 (MICR)プラットフォーム
- 分子医学研究所 (北京)の研究チームは今回、miRNAによって活性化するsgRNA前駆体 (pre-sgRNA)を設計開発した。Pre-sgRNAは、sgRNAの左右にmiRNAに相補的な配列 (miRNA結合配列)を結合した上で、さらに5'末端にキャップ構造、3'末端にウシ成長ホルモンのポリAシグナルを設けて、sgRNAを不活性な状態に維持している (原論文 Fig. 1-a 参照)。
- Pre-sgRNAの2ヶ所のmiRNA結合配列に相応するmiRNAsまたはsiRNAsが存在すると、アルゴノートAGO2による切断を介して、pre-sgRNAsから活性なsgRNAsが遊離し、Cas9またはdCas9による標的DNA部位の検出と編集が可能になる。
MICR-ON, MICRiおよびMICR-BE
- Pre-sgRNAsにdCas9-VPRを組み合わせたMICR-ON、dCas9-KRABを組み合わせたMICRiを、および、先行研究で開発されていたBE3 (APOBEC–nCas9–UGI)を組み合わせたMICR-BEを構築し、それぞれ、内在miRNAsまたは合成miRNAsによる内在遺伝子転写の上方制御、下方制御、および、一塩基編集を実現した。
- また、MICR-ONにTET-RFP (テトラサイクリン発現誘導配列TETと赤色蛍光タンパク質遺伝子)を結合することでMICR-ONレポーターを構築し、細胞型特異的なmiRNAsの活性や、マウスES細胞とC2C12細胞の分化過程におけるmiRNAsの変動追跡も、実現した。
- さらに、マウスESCで比較的高発現する異なるmiRNAファミリーから10種類のmiRNAsを選択し、相応するMICR-ON レポータ・ライブラリを構築し、フローサイトメトリーと顕微鏡によりマウスES細胞におけるmiRNA活性の不均一性を分析し、miR-21a活性の不均一性に新たな階層を発見した。
- CRISPR-Cas9の細胞型特異的活性化は、組織特異的プロモーターを利用することで実現可能であるが、それには、標的遺伝子座へのノックインまたはプロモーター配列を含む比較的大きなDNA断片のクローニングが必要になる。MICRプラットフォームの場合は、不活性なpre-sgRNAsの発現で十分である。
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