(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/06/01)
- Corresponding author: 金子周司(京都大学)
- 非定型統合失調症治療薬(Atypical antipsychotics: 以下、AA)が引き起こす糖尿病による死亡に至る可能性もある高血糖の発生機序を明らかにし予防法を発見した。
- はじめに、FDAの医薬品有害事象情報システム(FDA Adverse Event Reporting System, FAERS)*データベースに登録されている医薬品の組み合わせに注目し、AAの高血糖リスクを低減する医薬品を統計的に探索した。その結果、ビタミンD誘導体が、AAの一種であるクエチアピン(quetiapine)が引き起こした糖尿病に至る有害事象を顕著に低減することを見出した(挿入図参照)。
- * 2006〜2014年の登録データ〜630万件
- FAERSで同定したビタミンDの効果の検証:クエチアピン投与によってマウスに急激に発生するインスリン抵抗性が、餌にビタミンD3(cholecalciferol)を補うことで軽減された。
- 次に、KEGGパスウエイデータベースとGEO遺伝子発現データベースの解析から、インスリン受容体の下流に位置してシグナル伝達の鍵となるホスファチジルイノシトール-3キナーゼ(PI3K)の発現が、クエチアピンによって下方制御されるとする仮説が得られた。
- 仮設の実験検証:ビタミンD3を補助食としたマウスにおいて、骨格筋においてPI3Kの発現が回復に向かい、また、クエチアピンによって阻害されていたインスリンによるグルコースの取り込みも回復に向かいインスリン抵抗性が解消することを確認した。
- プレスリリースでは今回の成果を、臨床結果から疾患の分子機構をたどる「リバーストランスレーショナルリサーチ」の好例としている。

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