(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/06/05)
- [論文] クラス2タイプVI-A CRISPR/CasエフェクターC2c2の標的は一本鎖RNAである
- Omar O. Abudayyeh et al. “C2c2 is a single-component programmable RNA-guided RNA-targeting CRISPR effector.” Science. Published online 2016 Jun 2.
Corresponding authors: Eugene V. Koonin (NCBI);Feng Zhang (Broad/MIT) - E. V. KooningとF. Zhangらは2015年に、微生物ゲノムデータベースからCRISPR/Casローカスを網羅的に探索し、クラス2に属する新たなCas候補(C2c1; C2c2; C2c3)を同定し、CRISPR/Casシステムのクラス2をタイプⅡ (Cas9)、タイプⅤ (Cpf1, C2c1, C2c3)およびタイプⅥ (C2c2)で構成されるとした。今回、その中でLeptotrichia shahii 由来のC2c2の特性を解析した。
- C2c2を移植したE. coli は、ssRNAウイルスであるバクテリオファオージMS2に対して免疫応答を示した。
- C2c2はtracrRNAをともなわない単独のcrRNAにガイドされて、プロトスペーサーに相補的なssRNAを切断するRNA分解酵素である。
- 標的のssRNAへの結合によって活性化したC2c2は、in vitro においてcrRNAに非相補的なRNA分子、宿主のRNA、を分解し、in vivo で細胞死の誘導または細胞を休眠状態へ誘導する。
- C2c2は、外来ファージ以外に、宿主バクテリアの特定のmRNAsをノックダウンするようにプログラム可能である。
- C2c2は、保存されている2つのHEPNドメインの塩基性残基によって標的を切断する。
- HEPNドメインに変異を導入し、触媒活性を欠失したRNA結合タンパク質dC2c2を作出。野生型C2c2とdC2c2によって、RNAとその転写物の可視化や操作の手法が大きく広がることになる。
- また、C2C2には、特定の転写物を発現しているがん細胞、特定のクラスの神経細胞あるいは特定の病原体が感染した細胞を、細胞死または休眠状態へと誘導できる可能性がある。
- Omar O. Abudayyeh et al. “C2c2 is a single-component programmable RNA-guided RNA-targeting CRISPR effector.” Science. Published online 2016 Jun 2.
- [論文] CRISPR/Casシステムによるゼブラフィッシュにおける多重な条件付き突然変異誘発
- L. Yina, L.A. Maddisona & W. Chen. “Multiplex conditional mutagenesis in zebrafish using the CRISPR/Cas system.” Method. Cell. Biol. Available 2016 MAY 30.
Corresponding author: Wenbiao Chen (Vanderbilt University School of Medicine) - トランスジェニックゼブラフィッシュにおいて、Cas9の組織特異的およびまたは誘導可能な発現と、U6によるsgRNAの発現による条件付き突然変異誘発法を実現。
- 多重な条件付き突然変異誘発を実現するために、4種類のU6プロモーターを同定し、Golden Gateベクターを設計。
- L. Yina, L.A. Maddisona & W. Chen. “Multiplex conditional mutagenesis in zebrafish using the CRISPR/Cas system.” Method. Cell. Biol. Available 2016 MAY 30.
- [コメント] アルゴノート(Argonaute(Ago))ってどうよ?
- Google group "Genome Engineering using CRISPR/Cas Systems › RE: DNA-guided genome editing using the Natronobacterium gregoryi Argonaute"
- “NgAgo Gene Editing” Horizon Discovery
- ライフサインエンス分野のリソースとサービスを提供するHorizon Discovery社のゲノム編集技術(rAAV;ZFNs;CRISPR/Cas9;CRISPR/Cpf1; NgAgo)を対象とするコンパクトな解説の一つ
- “Will new gene editing tech NgAgo challenge CRISPR?” The Niche. 2016 May 15.
- Knoepfler研究室(UC Davis)のブログ;動向を注目してみていこう
- “Could the CRISPR-Cas9 genome editing system be replacedby the NgAgo-gDNA system?” Isabella Wolcott (Editor). Express Biology. Published online 2016 May 28.
- F. GapらがNature Biotechnology に発表したNatronobacterium gregoryi 由来のアルゴノートとgDNAを利用するゲノム編集技術(NgAgo-gDNA)とCRISPR/Cas9の長所・短所を比較。
- NgAgo-gDNAは、植物に適用できないが、合成gDNAの入手が容易、多重な標的遺伝子編集が容易、GCリッチ遺伝子の高効率かつ高精度な編集が可能、PAMの縛りがない利点故に、動物ゲノムの編集には向いている。
- NgAgo-gDNAは一方で、gDNAがゲノムに組み込まれることから、好ましくない変異が誘導される問題や、倫理的懸念が存在する問題を伴う。また、37℃が至適温度のため、適用可能な生物が限られる。
- 従って、動物/ヒトのゲノム編集に向いているとみられるが、NgAgo-gDNAはCRISPR/Cas9に取って代わる技術ではない。
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