(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2015/01/30)
CRISPR-Cas9技術の第一人者の1人Feng Zhang(Broad Institute)を始めとする米日の研究チームが、CRISPR-Cas9複合体に3種類の転写活性化ドメインを融合することによって、ゲノムワイドで、遺伝子ならびに長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)を高発現させることに成功した。
  • これまでに、dCas9(触媒活性を失活させたCas9)にVP64のような転写活性化ドメインを融合させて標的遺伝子の発現を上方制御する試みが行われていたが、極めて効率が低かった。研究チームは今回、CRISPR-Cas9複合体から外に向かって突き出しているsgRNAのtetraloopとstem loop2に注目し、dCas9-VP64と複合体を形成しているsgRNAの2つのループにMS2-p65-HSF1を融合し、3種類の転写活性化因子を備えた高効率な転写活性化システムを開発して、SAM(synergistic activation mediator)と命名した。
  • 始めに、従来の手法では転写活性化が困難であった12種類の内在遺伝子を使って絞り込んだsgRNAの最適化設計基準に拠ったSAM法を使って、ヒト細胞株において、10種類の遺伝子の転写を同時に活性化し、また、lncRNAの転写も活性化する事に成功した。
  • 次に、NCBIのRefSeqに収録されている23,430種類のタンパク質コーディング遺伝子のアイソフォームを標的とする70,920種類のsgRNAを設計し、メラノーマ細胞にSAM法を適用した。レンチウイルスでsgRNAを感染7日後に、癌遺伝子BRAFの阻害剤を加え、14日後に阻害剤耐性を示した細胞のゲノム配列を決定して、耐性をもたらす候補遺伝子(耐性遺伝子)を特定した。候補遺伝子には既知の耐性遺伝子とともに新たな耐性遺伝子が含まれており、薬剤耐性をもたらす新たな経路の存在が示唆された。
  • SAM法はモジュール構造をしており、sgRNAや転写抑制化ドメインの差し替えが可能であり、広範な適用分野が待っている。
【注】注目すべき関連記事「2015/01/28 CRISPR-Cas9技術を使って転写の光スイッチを実現