(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2015/01/28)
東京大学佐藤守俊研究室は、光によって複数の遺伝子の転写をオン・オフする手法“CRISPR-Cas9-based photoactivatable transcription system (以下、CPTS)”を確立した。
【CPTSの概要】
  • プローブとして2種類の融合タンパク質遺伝子を細胞内に導入する: 
    アンカープローブ:dCas9(酵素活性を消失させたCas9)とシロイヌナズナ由来のタンパク質CIB1 
    アクチベータープローブ:転写活性化ドメインp65とシロイヌナズナ由来の光受容体CRY2のPHRドメイン 
    アンカープローブが標的遺伝子の転写開始点の上流に結合するように、CRISPR-Cas9システムにおけるガイドRNAを設計する。
  • CIB1とCRY2PHRは、青色光照射の有・無によって可逆的に結合・解離する性質を持っていることから、転写活性化を青色光で制御することが可能なる。
【実証と展開】
  • HEK293T細胞において、4種類の遺伝子(神経細胞分化を制御するASCL1筋細胞の分化を制御するMYOD1、多分化能維持に関わるNANOG、サイトカイン制御に関わるIL1RN)のそれぞれの転写を、また、2種類のガイドRNAを併用することで、ASCL1MYOD1の一組の転写を、光でオン・オフすることに成功した。HeLa細胞とCOS-7細胞でも同様の結果を得た。
  • CRISPR-Cas9システムを利用できたことで、簡便で普遍性が高く、時間分解能と空間分解能が高い、CPTSを実現できた。Broad InstituteのFeng Zhang等が開発したLITEシステムおけるTALE(transcription activator-like effectors)を単にdCAS9で置き換えただけでは、CPTSは実現できなかった。
  • アクチベータープローブの転写活性化ドメインは、エピジェネティック修飾酵素、ヌクレアーゼ、リコンビナーゼに置き換えることが可能であり、CPTSは光遺伝学、哺乳類のゲノム編集およびバイオテクノロジーに新たな展開をもたらす。