1. CRISPR-Cas9の活性をmRNAsで調節する
[出典] "RNA Strand Displacement Responsive CRISPR/Cas9 System for mRNA Sensing" Li Y, Teng X, Zhang K, Deng R, Li J. Anal Chem. 2019-02-27.
- 清華大学の研究チームは今回、mRNAsに応答してCas9との結合をオンオフするsgRNA (論文ではmsgRNAと表記)を開発し、CRISPR-Cas9システムの遺伝子編集活性をmRNAsで制御可能なことを示した。
- 通常のsgRNAは、その20-bpのスペーサを介して標的DNA領域を認識し結合し、独特の2次構造を帯びたスキャフォールドを介してCas9を認識し結合する (ライフサイエンス新着論文レビュー引用下図参照)。

後者の認識・結合にはsgRNAの2次構造が決定的である。 - スキャフォールド内のテトラループ領域または3’末端領域に、anti-mRNAセンシング領域とmRNAセンシング領域が対になったヘアピン構造と鎖置換の足がかり (toehold)配列を挿入し、sgRNAとCas9の結合を阻害し、ひいてはCas9をOFF状態にとどめる。mRNAの存在下では、mRNAが足かがり配列を足がかりにして鎖置換を介してヘアピン構造を直線状に展開し、sgRNAがCsa9に結合可能のON状態となる。
- このスイッチが作用することをHeLa細胞で確認し、mRNAのレベルに応じたCas9の活性化と多重化が可能なことを確認し、論理ゲートのNORおよびNANDを作出した。
- sgRNAの改変とmRNAによるCas9活性の調節は、Cas9改変による活性調節よりも簡便である。
- 関連bioRxiv投稿:"ssRNA/DNA-Sensors via Embedded Strand-Displacement Programs in CRISPR/Cas9 Guides" Jakimo N, Chatterjee P, Jacobson JM. bioRxiv. 2018-02-12.
- 関連crisp_bio記事:2019-03-01 マイクロRNA (miRNA)で活性化可能なCRISPR-Cas9プラットフォームを開発し、miRNAレポーターと簡便な細胞型特異的遺伝子編集法を実現
2. CRISPR-Cas9の投与レベルと時空間制御の双方を精密に制御可能とする単一システムを開発
[出典] "A singular system with precise dosing and spatiotemporal control of CRISPR-Cas9" Choudhary A [..] Mazitschek R. Angew Chem Int Ed Engl. 2019-03-04.
- 低分子または光によってCas9の投与量とタイミングを制御することが可能になってきたが、低分子による制御には、ダイナミックレンジが狭く、低分子が存在しない状態でも活性 (バックグラウンド)が見られ、望ましくない生物学的な活性を示す問題があり、光制御には、長時間強い光を照射する必要がある。また、投与量とタイミングおよび精密なターゲッティングを全て制御可能にする単一システムは存在していない。
- 先行研究で低分子によるある程度の投与量と時間制御を可能にしたCas9アクチベーターを開発していたHarvard Medical School, Broad InstituteならびにMassachusetts General Hospitalの研究グループは今回、このCas9アクチベーターを、ケージド化合物化と次世代タンパク質工学により、広いダイナミックレンジ、低いバックグランド、低光度な光での高速光活性化、かつ生物学的に不活性なCas9活性制御ツールへと発展させた。
3. CRISPR-Cas9/gRNAの血液脳関門超えを磁気誘導で実現し、脳内潜在感染HIV-1の根絶へ
[出典] "Magnetically guided non-invasive CRISPR-Cas9/gRNA delivery across blood-brain barrier to eradicate latent HIV-1 infection" Kaushik A, Yndart A [..] Nair M. Sci Rep. 2019-03-08.
- HIV-1 LTRを標的とするCas9/gRNAを静電相互作用を介して磁電気ナノ粒子 (magneto-electric nanoparticles, MENPs)に結合したナノ製剤 (nano-formulation, NF)を、0.8 Tの静磁場により脳内へと非侵襲的に送達し、交流磁場でCRISPR/Cas9をMENPsから切り離すことで (原論文Figure 5引用下図左)、CRISPR/Cas9を活性化し、潜伏感染HIV-1を根絶するシステムを開発し、in vitro BBBモデルで検証(原論文Figure 1の下図右)。今後、動物実験を進める。
4. CRISPR/Cas9 HDRにおいて、ドナーDNAテンプレートの多重挿入が高頻度で発生する
[出典] "Pervasive head-to-tail insertions of DNA templates mask desired CRISPR/Cas9-mediated genome editing events" Skryabin B [..] Rozhdestvensky TS. bioRxiv. 2019-03-08.
- University of Muensterを中心とする研究グループは、ドナーDNAテンプレートを利用したCRISPR/Cas9 HDRを介して6種類の条件付きノックアウトマウスモデルの作出を試みた際に、ドナーssDNA/dsDNAテンプレートの3コピーまでの多重なヘッドトゥーテール挿入が、HDRそしてまたはNHEJを介して、高頻度で発生することを見出した。
- この現象は、通常のPCRではほとんど検出されないため、有効な編集率を高く判定することにつながることから、注意喚起をするとともに、実用的問題解決法を提案
5. UKバイオバンクの大規模コホートを対象とする相関解析とマウスモデルにおけるCRISPR KO実験から、GAL5.1エンハンサーの不安および男性の飲酒への関与をより明確に
[出典] "CRISPR disruption and UK Biobank analysis of a highly conserved polymorphic enhancer suggests its role in anxiety and male alcohol intake" McEwan A [..] MacKenzie A. bioRxiv. 2019-03-09.
- 先行研究で、ガラニン・ペプチドをエンコードするGAL遺伝子のハプロタイプと不安およびアルコール乱用の間の密接な相関関係が、異なる小規模な男性コホートから報告されたが、その分子基盤は不明であった。
- University of Aberdeen, University of Edinburghなど英国研究グループは今回、UKバイオバンクのデータから、大規模な男性コホート(n=115,865) を対象として、保存性が高いヒトGAL5.1エンハンサーにおけるアレル変異 (GGまたはCAハプロタイプ)と飲酒 (AUDITスコア)および不安とが、先行研究と同様に、密接に相関することを見出した。
- GAL5.1をCRISPR-Cas9でノックアウトしたマウスでは、扁桃体と視床下部におけるGALの発現レベルが顕著かつ特異的に低減し、エタノール摂取が減少し、また、不安を緩和した。
- 関連crisp_bio記事:2019-01-08 英国500,000人のバイオデータ公開のインパクト
6. 野生生物の保護を目的とする遺伝子編集に対する一般社会の見方
[出典] "Public views about gene editing wildlife for conservation" Kohl PA, Brossard D, Scheufele DA, Xenos MA. Conserv Biol. 2019 Mar 8.
- 1,600人の米国成人を対象とする調査結果;平均してベネフィットよりもリスクを感じている、科学知識の権威を信じる層は容認する傾向にある、など。


コメント