(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/06/14)
- [Review] CRISPR/Cas9によってゲノムの高次構造形成過程研究のステージが記述から解析へと加速
- Corresponding author: Jennifer E. Phillips-Cremins (University of Pennsylvania)
- 哺乳類ゲノムが1次元から階層的に折りたたまれた複雑な3次元トポロジーへと折りたたまれる7段階のイントロダクションから始まり、3C/4CやHi-Cなどによるクロマチン構造解析の成果を経て、CRISPR/Cas9の利用によって得られたゲノム3次元トポロジーをめぐる最近の知見を紹介:
- CTCFが結合する方向とループ形成の因果関係:Ya Guo et al.“CRISPR Inversion of CTCF Sites Alters Genome Topology and Enhancer/Promoter Function.”Cell. 2015 Aug 13;162(4):900-10.
- スーパーエンハンサー周囲のCTCF/コヒーシン・ループのエンハンサー・ブロッキング(インシュレーター)活性:Jill M. Dowen et al. “Control of cell identity genes occurs in insulated neighborhoods in mammalian chromosomes.” Cell. 2014 Oct 9;159(2):374-87.
- CTCFタンパク質結合サイトが遺伝子発現の活性化領域と抑制領域を相互に峻別する:Varun Narendra et al. “Transcription CTCF establishes discrete functional chromatin domains at the Hox clusters during differentiation.” Science. 2015 Feb 27;347(6225):1017-21.
- TADs(トポロジカルドメイン)間の境界の崩壊によるエンハンサーとプロモーターの新たな相関発生〜遺伝子発現異常〜疾患:Darío G. Lupiáñez et al. “Disruptions of topological chromatin domains cause pathogenic rewiring of gene-enhancer interactions” Cell. 2015 May 21;161(5):1012-25.
- CRISPR/Cas9技術によって、ゲノムの1次元配列から高次元の構造、そして遺伝子発現までの多層な因果関係の解明が、従来の解析手法とゲノム編集技術の融合によって加速されていく。
- [情報拠点注] 原論文タイトル中の“throw —— for a loop”は元々イディオムであったところDNA高次構造形成におけるloopを掛けたフレーズかとも思われます。
- [Correspondence] Cpf1によるマウスゲノム編集を検証(1)
- Corresponding authors: Sang-Wook Lee; Myeong Sup Lee; In-Jeoung Baek; Young Hoon Sung (Asan Medical Center)
- Acidaminococcus sp. BV3L6 (AsCpf1)またはLachnospiraceae bacterium N D2006 (LbCpf1)のmRNAを、C57BL/6Jマウスに標的遺伝子の2カ所を標的とする2種類のcrRNAとともに、受精卵前核細胞質にマイクロインジェクション。
- Trp53 遺伝子、Prkdc 遺伝子またはその双方を標的として得られた変異マウスの解析から、Cpf1は遺伝子ノックアウトマウス系統作出に有用と判定。モザイク現象は発生(AsCpf1 63.2%;LbCpf1 46.2%;)
- オフターゲット作用については、2〜4bpのミスマッチのサイトでは非検出であり、1bpのミスマッチ・サイト1カ所(その変異率は16〜18%)。
- [Correspondence] Cpf1によるマウスゲノム編集を検証(2)
- Corresponding author: Jin-Soo Kim (Inst. Basic Science/Seoul National U.)
- Acidaminococcus sp. BV3L6 Cpf1 (AsCpf1) と2種類のcrRNAからなるRNPは、in vitro (マウスNIH3T3細胞)にてFoxn1 遺伝子標的サイトに45%の頻度でindelsを導入
- AsCpf1 RNPを、1細胞期胚にマイクロインジェクションまたはエレクトロポレーション。いずれもCas9 RNPsと同等の変異導入効率を示したが、エレクトロポレーションの場合は、5分のうちに50個の受精卵にRNPを注入することが可能。また、Vegfa 遺伝子とTyr 遺伝子も標的として実験。Tyr 変異マウスはモザイク現象を示した。オフターゲット作用は検出されず。
- [REVIEW] CRISPR/Cas9によって内分泌学モデルマウス新世代へ
- Frédéric Flamant (Institut de Génomique fonctionnelle de Lyon)
- 構成:CRISPR/Cas9ゲノム編集の原理;マウスゲノム編集への応用例;マウス卵母細胞への(in ovo ) Cas9とsgRNAの送達、並びに、モザイシズム(mosaicism)の問題;オフターゲット編集の問題;gRNAの設計;NHEJに対してHDRを優勢にする方法;dCas9の利用;内分泌学モデルマウス開発への利用拡大
2 Correspondence→Yongsub Kim et al. “Generation of knockout mice by Cpf1-mediated gene targeting.” Nat. Biotechnol. Published online 2016 Jun 6.
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