(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2014/11/10)
   Nature Methods 11月号のResearch Highlights
は、UC Berkeley(以下、UCB)の Jennifer A. Doudna等がNature誌に発表した「CRISPR-Cas9システムによる一本鎖RNA(ssRNA)の編集実現」の論文を取り上げた。

   Type II CRISPR-Casシステムにおいて、エンドヌクレアーゼCas9とガイドRNA(gRNA)の複合体がターゲットのDNAに結合し、DNAを切断する。この鍵は、ターゲット配列の末端に続くPAM(protospacer adjacent motif)が握っているStreptococcus pyogenes のCas9に対応するPAMの塩基配列はNGGの3文字である)。このPAMがRNAには存在しないことから、CRISPR-Cas9によるRNA編集は不可能と想定されていた。

   UCBのグループは今回、PAMを含むオリゴヌクレオチド 'PAMmer'を適切に設計し、PAMをトランスに供給することで、Cas9によってssRNAをgRNAの標的サイトで切断可能なことを示した [Nature論文のFigure 1: RNA-guided Cas9 cleaves ssRNA targets in the presence of a short PAM-presenting DNA oligonucleotide (PAMmer)参照]
  • PAMmerはデオキシリボヌクレオチドで構成する。リボヌクレオチドで構成したPAMmerは機能しない。
  • PAMmerの5'末端を伸ばすことでgRNAとssRNAの結合の特異性を高めることができるが、2〜8ヌクレオチドの伸長の場合に、特異性と結合効率のバランスがとれる。
  • PAMmerとssRNAの間に不正な塩基対が形成された場合でも、Cas9-gRNAはssRNAを切断するが、PAMを含まないdsDNAを切断しない。Cas9-gRNAは、ssRNAだけをターゲットとする。
  • PAMmerを介したCas9-gRNAの応用例として、HeLa細胞の溶解液からGAPDH 転写物の分離を試行:リボヌクレアーゼ RNase Hによって分解されないようにPAMmerを化学修飾する必要があったが、分離に成功した。この分離に、アフィ二ティータグ、架橋結合、あるいはプローブは不要であった。
  • PAMmerを組み込んだCRISPR-Cas9によって、RNAiでは困難なRNA分解が可能になる。また、ヌクレアーゼの触媒機能を不活性化した'dRCas9'とマーカーの組み合せによって、RNAの動きを追跡することが可能になる。