(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/06/17)
  • Corresponding author: 伊藤孝司(徳島大学)
  • GM2ガングリオドーシスは、遺伝子変異がGM2ガングリオシド(GM2)のライソゾーム系での分解阻害を引き起こし、患者の脳にGM2が過剰に蓄積される疾患であり、患者は各種の神経症状を呈する。これまでのところ根本的療法は無く、酵素補充療法などが試みられている段階である。
    • GM2ガングリオドーシスは、HEXAHEXB、およびGM2A の3種類の遺伝子の変異が病因である。
      • これら3種類の遺伝子はそれぞれ、ライソゾームβ-ヘキサイミノダーゼ(Hex)のαサブユニットα、βサブユニット、およびGM2活性化タンパク質GM2Aをコードしている。
      • ヘキサイミノダーゼには、αβヘテロ二量体からなるβ-ヘキソサミニダーゼA (Hex A)、ββホモ二量体からなるβ-ヘキソサミニダーゼB(Hex B)およびαホモ二量体からなるヘキソサミニダーゼS(Hex S)の3種類のアイソザイムが存在する。
  • 研究チームは今回、チャイニーズハムスター由来CHO細胞株で過剰発現させたヒトGM2A を精製し、これがGM2A欠損患者由来の繊維芽細胞に取り込まれ、また、細胞培養液に添加されると繊維芽細胞へのGM2蓄積が抑制されることを示した。
    • 研究チームは先行研究で、βサブユニットのアミノ酸配列’DL (β452–453)とRGNK (β312–315)’をそれぞれ、’αサブユニットのNR (α423–424)とGSEP (α280–283)ループ’に置換したHex B (modB)を作出し、これが血漿中で野生型Hex Bと同様に安定でありかつGM2ガングリオシドを分解することを明らかにしていた。
    • 研究チームは、α-サブユニットをコードするHEXA 遺伝子変異によるHexA酵素失活が引き起こすTay-Sachs病患者由来繊維芽細胞におけるGM2蓄積に対するmodB酵素の補充による効果(GM2低減)が、GM2Aの併用によって亢進することを初めて見出した。
    • GM2AとHexA αβヘテロ二量体の結晶構造(1PUBと2GJX)に基づいたmodBとGM2Aの複合体構造のホモロジーモデリング:GM2Aが、βサブユニット本来の配列と置換したmodBのGSEPループに、HexAのαサブユニットへの結合と同様に結合することを示唆した。
    • 38460001