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[出典] "H3K27M induces defective chromatin spread of PRC2-mediated repressive H3K27me2/me3 and is essential for glioma tumorigenesis" Harutyunyan AS, Krug B […] Majewski J. Nat Commun. 2019-03-19.

背景
  • H3のヒストンテールから27番目のリジンがメチオニンに置換されたH3K27M変異は、2016年にWHOの中枢神経系腫瘍分類において、サブグループびまん性正中グリオーマ (diffuse midline glioma)の分子的特徴と定義されたが、H3K27Mから腫瘍形成に至る分子機序には未だ不明な点が多い。
  • H3K27MがH3K27のトリメチル化を抑制することは知られている。カノニカルなH3 (H3.1; H3.2)およびH3バリアント (H3.3)に生じるH3K27Mは、H3プールの一部 (3-17%)に止まるが、H3全般にわたり遺伝子転写抑制修飾であるトリメチル化 (H3K27me3)を著しく抑制する。In vitro実験からは、H3K27Mが、H3K27のメチル化を触媒するポリコーム抑制複合体2 (PRC2)の主要コンポーネントであるEZH2に強く結合することでその酵素活性を阻害し、ひいてはH3K27me3が抑制されることが示唆されている。
  • しかし、in vivoでH3K27me3の欠損が腫瘍形成を誘導する分子機序には諸説ある。例えば、PRC2がK27M変異ヌクレオソームへとリクルートメントされそしてまたは抑制される、PRC2が高親和性サイトへと優先的にリクルートメントされる、PRC2がK27M変異ヌクレオソームによって正常なサイトから排除される、などであり、また、PRC2の触媒活性がゲノム上のサイトによって異なることが示唆されている。
実験概要
  • McGill Universityを中心とするカナダ、米国ならびに英独の共同研究グループは、今回、H3K27me3/me2レベルの低下が腫瘍形成をもたらす分子機構と、腫瘍維持におけるK27M変異の必要性を明らかにすることを目的として、小児グリーマ患者由来の初代細胞 (G477; BT245; DIPGXIII)とHEK293T細胞を対象として、CRISPR-Cas9によるH3K27Mの除去および過剰発現を加え、エピゲノムとトランスクリプトームおよび細胞増殖の比較解析を進め、PRC2を過剰発現または薬理的に阻害する実験も行った。加えて、腫瘍細胞を同所移植したマウスにおいて、変異が腫瘍の形成と維持に与える影響を見た。
結論
  • K27M変異は、PTC2のクロマチンへのデポジションと伝播には影響を与えない。
  • K27M変異は、H3K27me3の広がりを顕著に抑制し、H3K27me2をある程度抑制する:H3K27me3は、PRC2と親和性が高い大きなCpGアイランドの外には広がらない。一方で、H3K27me2はPRC2との親和性が高い領域外にも存在する。
  • H3K27M変異を除去すると、H3K27me2/me3の広がりが正常細胞レベルへと回復し、腫瘍細胞の増殖が阻害され、その腫瘍形成能が完全に失われることを明らかにした。
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