(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/06/29)
- [論文] 光合成細菌Rhodobacter sphaeroidesのArgonauteは、RNAをガイドとし、DNAを標的とする
- Corresponding authors : 三好智博;内海 利男(新潟大学)
- Agoの構造と機能の概要
[注] 本項、CRISPR関連文献メモ_2016/04/04から引用・改変- ヒト、出芽酵母ならびに高度好熱菌株のAgo構造(参考図1):N末端ドメイン(NTD)-リンカー1(L1)-PAZドメイン-リンカー2(L2)-MIDドメイン-PIWIドメイン-C末端の構成;N-PAZからなるローブとMID-PIWIからなるローブがリンカーで連結された構造を取る;PIWIはRNase H触媒ドメインの構造ホモログでエンドヌクレアーゼ活性を有するが必ずしも全てのArgが切断活性を有するわけではない
- Agoの機能:ヒトを含む真核生物において、アルゴノート (Argonaute: Ago) は、ダイサー (Dicer)で切り出された二本鎖のmiRNAまたはsiRNAからの一本鎖RNAを保持してエフェクター複合体 (RISC)を形成し、標的mRNAを認識して翻訳の抑制や不安定化、あるいはmRNA切断によるRNAiを誘導する(参考図2)。
- RNAiパスウエイを持たないバクテリアとアーケアにおけるAgoの役割ははっきりとしていなかったが、最近、DNAにガイドされたAgoが、DNAウイルスやプラスミドの外来DNAを切断して宿主保護することが明らかになった.また、触媒活性を持たない光合成細菌Rhodobacter sphaeroides のAgo(Rs Ago)がRNAガイドと関連ヌクレアーゼを介して標的を切断することも明らかになった.これらの標的切断の分子機構は、CRISPR/Casシステムにおける標的切断の分子機構を思わせるものである。
- 研究チームは今回、Rs Agoと18-ntのガイドRNA(gRNA)ならびにgRNAに相補的な標的DNAの複合体の構造を分解能2.0 Åで解き、Rs Agoの機能とその分子機構を詳らかにした(Rs AgoとT. thermopilusAgoのモデル図(参考図3)参照)。
- NTDとPIWIの協働によって、gRNA鎖の3’領域(14-18 nts)と標的DNA鎖の5’領域(14’-18’ nts)の間の塩基対形成が維持され(図中 Packing-type N domain)、この協働が、標的との結合の鍵を握っていた。このモデルは、Rs Agoに結合するRNAsは細胞内転写物由来ではっきりとした2次構造をとらず、従って、Tt Agoと対照的に、Ago結合にあたり二本鎖を解きほぐす必要がないことを意味している。
- Tt Agoの場合は、NTDが楔(図中 wedge)となってgDNAと標的DNAの塩基対形成をそれぞれ16番目のヌクレオチドまででブロックする。
- 参考図3a左図のなかで、点線で囲まれた部分は、核酸の副溝の構造を認識して、RNAとDNAを識別する部位である。
- Rs Ago・gRNAは、新たなゲノム編集ツールである。
- [論文] ゲノム編集によって、チョウの眼状紋色模様の亢進遺伝子と抑制遺伝子を同定
- Corresponding author: Robert D. Reed (Cornell University)
- チョウ(Vanessa cardui )の卵に2種類のsgRNAsとCas9タンパク質をマイクロインジェクションする機能喪失実験による、眼状紋が決定されていく初期に発現する2種類の転写因子の役割を解析。
- はじめに、メラニン色素沈着遺伝子Dopa decarboxylase (Ddc )を標的とする予備実験で、CRISPR/Cas9が有効であることを確認。
- splat 遺伝子の欠失だけで眼状紋色模様の減衰あるいは消滅が起こった。
- 一方で、これまでの見方に反して、Distal-less (Dll ) の欠失は、眼状紋のサイズと数が増加をもたらした(参考図4参照)。
- チョウの眼状紋の存否と形は、亢進遺伝子splat と促進遺伝子Dll の協働の結果と考えらえる。
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