(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/0604/04)CRISPR関連文献メモ_2016/04/04
- Corresponding author: Jennifer A. Doudna (UC Berkeley)
- ヒトを含む真核生物において、アルゴノート (Argonaute: Ago) は、ダイサー (Dicer)で切り出された二本鎖のsiRNAを取り込み引き剥がして、一方だけを保持してエフェクター複合体 (RISC)を形成し、標的mRNAを認識して遺伝子発現を抑制するRNAi作用をもたらす(挿入図1 ヒトのアルゴノートPAZドメインとsiRNAとの複合体構造).
- RNAiパスウエイを持たないバクテリアとアーケアにおけるAgoの役割ははっきりとしていなかったが、最近、DNAにガイドされたAgoが、DNAウイルスやプラスミドの外来DNAを切断して宿主保護することが明らかになった.また、触媒活性を持たないRhodobacter sphaeroides のAgo(RsAgo)がRNAガイドと関連ヌクレアーゼを介して標的を切断することも明らかになった.これらの標的切断の分子機構は、CRISPR/Casシステムにおける標的切断の分子機構を思わせるものである.
- CRISPR/CasシステムのほとんどはAgo遺伝子を欠いているが、cas 遺伝子オペロンにAgoタンパク質がコードされているバクテリアが数種類発見されている.今回、深海熱水噴出孔由来のバクテリアMarinitoga piezophila のAgo (MpAgo)の構造・機能を解析し、Agoシステムの進化について考察した(挿入図2 PDB登録MpAgoの結晶構造).
- 切断標的とする一本鎖へとガイドするRNAの5末が、既知のAgoではリン酸化されたが、MpAgoの場合はヒドロキシル化されていることが明らかになり、また、結晶構造から5’末リン酸塩の相互作用を阻害する機構が明らかになった.
- さらに、アミノ酸配列のアライメント解析結果に基づいて、CRISPR cas にコードされているMpAgo様タンパク質候補の推定を試み、Thermotoga profunda のAgoがMpAgo様である事を推定・実証した.こうして、Agoファミリーの中に、ヒドロキシル化5’末RNAをガイドとするサブファミリーが存在する事が明らかになった.
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