(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/06/29)
  • Corresponding authors: Neal Rosen; Scott W. Lowe (Memorial Sloan Kettering Cancer Center)
  • 京都府立大学酒井敏行JTが共同で創薬しグラクソ・スミスクラインへ導出した世界初のMEK阻害剤であるトラメチニブ(trametinib)は、メラノーマに対して画期的な奏功率を示しメラノーマ治療薬として承認され、その後、ノバルティス・ファーマが申請したダブラフェニブ(dabrafenib)との併用療法が2014年1月にFDAに認可された。
  • 研究チームは今回、shRNAプールライブラリーを利用した負の選択スクリーニングから、トラメチニブに対して耐性を得たKRAS変異肺がんのトラメチニブに対する感受性が、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)の阻害によって回復することを見出した。
    • KRAS変異肺がん細胞株ならびに患者の腫瘍において、トラメチブ投与によって、FGFR活性化のバイオマーカーであるFRS2リン酸化が亢進した。この亢進はFGFR1阻害によって消滅した。
    • KRAS変異肺がんは、線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)シグナル伝達のフィードバック活性化によって、トラメチニブに対して耐性を獲得すると考えられるが、この機構はFGFR1特異的であり、FGFR1以外のFGFRファミリーメンバーまたはその他の受容体型チロシンキナーゼ(receptor tyrosine kinase、RTK)には当てはまらなかった。
    • また、トラメチニブとFGFR阻害の併用の効果は、KRAS変異肺がんと膵がんに限定され、野生型KRAS肺がんあるいはKRAS変異大腸がんには効果を示さなかった。
    • FGFR1はERKAKT双方の代償的活性化を阻害し、また、多様な細胞過程に関与するAKTをターゲットとするよりは、FGFR1を標的とする方が安全性が高いと思われる。
  • [注] KRAS変異がん関連crisp_bio記事:「2016/06/06 KRas変異がんを合成致死へと誘導する化合物をスクリーニング