(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/07/08)
[出典] Tsuchida J, Matsusaka T, Ohtsuka M, Miura H, Okuno Y, Asanuma K, Nakagawa T, Yanagita M, Mori K. “Establishment of Nephrin Reporter Mice and Use for Chemical Screening.” PLoS One. 2016 Jun 30;11(6):e0157497Corresponding author: 森 潔(TMKプロジェクト, 京都大学)
  • ネフリン(nephrin)は腎糸球体の構造を維持する重要なタンパク質であり、ネフリンの不全はタンパク尿症(ネフローゼ症候群)のきっかけとなる。糸球体障害の初期にネフリン発現の低下が見られることから、腎臓の糸球体足細胞(ポドサイト)でのネフリン発現亢進による治療効果が見込まれる。
  • 研究チームは今回PITT(pronuclear injection-based targeted transgenesis)法*を開発し、ネフリンレポーターマウス(Nephrin-EGFPマウス)系統を樹立した(参考図:原論文図1のPITTプロトコル説明図を引用改変)。
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    • Nephrin-EGFPマウスはそのRosa26 領域に、EGFPの発現を調節する5.5kbのnephrin プロモーターの単一コピーを帯びている。
    • Nephrin-EGFPマウスは、ポドサイト特異的にEGFPが発現するという特徴を備えているが、その作出にES細胞を必要としないことも特徴である。
    • (*)PITT法レビュー:"PITT: pronuclear injection-based targeted transgenesis, a reliable transgene expression method in mice" Ohtsuka M1, Miura H, Sato M, Kimura M, Inoko H, Gurumurthy CB. Exp Anim. 2012;61(5):489-502.
  • 次に、Nephrin-EGFPマウスから糸球体を分離・培養し、培養糸球体におけるEGFP発現を自動定量するプロトコルを開発した。
    • 培養5日間でEGFPのシグナルは大きく低下する。マウスの培養ポドサイトにおけるネフリン発現を上昇させることが知られているビタミンDを処方するとこの低下は抑制された。その分子機構は、ビタミンDが培養糸球体内在のネフリンのmRNA量とタンパク質発現を上昇させることにあった。
  • Neprin-EGFPマウスは、nephron プロモーターの活性をEGFP蛍光に変換することから、nephron 遺伝子の発現を亢進する低分子スクリーニングに有用である。