[出典] "A type III CRISPR ancillary ribonuclease degrades its cyclic oligoadenylate activator" Athukoralage JS [..] White MF. J Mol Biol 2019-05-06(bioRxiv. 2019-03-20);"If You’d Like to Stop a Type III CRISPR Ribonuclease, Then You Should Put a Ring (Nuclease) on It" Mo CY, Marraffini LA. Mol Cell. 2018 Nov 15;72(4):608-609.
背景
背景
- タイプIII CRISPRシステムはRNAとssDNAの双方を標的可能である。サブタイプとして、Cas10とCsm複合体とcrRNAをエフェクター複合体とするIII-Aと、Cas10とCmr複合体とcrRNA をエフェクター複合体とするIII-Bが存在するが、エフェクター複合体内のcrRNAが相補的な標的に結合するとCas10のHDドメインが活性化して転写進行中のssDNAを分解し、Csm3またはCmr4ドメインの活性化により標的RNAを分解する。
- タイプⅢ CRISPRシステムはさらに第3の核酸分解機能を備えている。Cas10にてHDドメインの活性化に加えてPalmドメインも活性化し、ATPからセカンドメッセンジャー (二次情報伝達分子)サイクリックオリゴアデニル酸(cOA)を合成し、このcOAはCsm6/Csx1のCARF (CRISPR Associated Rossman Fold)ドメインに結合してCsm6/Csx1のHEPN (Higher Eukaryotes and Prokaryotes, Nucleotide binding) ドメインをアロステリック作用を介して活性化し、非特異的なRNA分解を誘導する。
- crRNAの標的に特異的でなく無差別なRNA分解はウイルスやファージに対する免疫応答を強化することになる。一方で、Cas10の活性は標的核酸が消滅すると停止するのに対して、Cas10によって合成されたcOAの活性は持続し、宿主細胞のRNA転写物の分解を介して宿主細胞の成長を停止することにもなる。したがって、宿主細胞には、c0Aを介した無差別リボヌクレアーゼ活性を抑制する機構が存在するはずである。
成果
- University of St Andrewsの研究チームは先行研究において(Nature, 2018)、University of St Andrewsの研究チームは、Crenarchaea門のSulfolobus solfataricusにおいて、リング状のcOA (4ユニットのAMPで構成されるcOA, cA4)を分解する酵素 ‘ring nuclease’ を見出していたが、今回、高度好熱菌のThermus thermophilus HB8において、機能未知タンパク質 (hypothetical protein)の一種であるTTHB144が、cA4で活性化されるHEPNリボヌクレアーゼであると同時に、CARF N末端においてcA4に結合し分解する'ring nuclease'であることを同定した (cOAを介したRNA分解過程とCsm複合体とCmr複合体の構成について、それぞれ、原投稿Graphical abstractとFigure 1 -a 引用した下図参照)。
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