1. 細胞壁が未発達な受精卵にPEG–Ca2+を介してCRISPR/Cas9 RNPを直接導入する植物遺伝子編集技術を確立
[出典] "An efficient DNA- and selectable-marker-free genome-editing system using zygotes in rice" Toda E [..] Okamoto T. Nature Plant. 2019-03-25.
  • 理化学研究所、首都大学東京、JTならびに徳島大学 (兼務を含む)の研究グループは今回、先行研究で開発していたイネin vitro受精法 (Planta, 2007)により精細胞と卵細胞を電気的に融合後、細胞壁が未発達の期間内に、Cas9-sgRNAをRNPとしてPEG–Ca2+により直接導入し、受精卵培養と再分化を経て、遺伝子編集イネ再生に至った。編集効率は14-64%であった。
  • 本手法は、アルゴバクテリウムによる遺伝子導入法で必要となる選択マーカー遺伝子、Cas9 DNA、プロトプラストの分離・培養を必要としない特長を備えている。また、トウモロコシ、小麦および大麦のように受精卵の分離培養が実現されている作物については、配偶子の分離とその電気融合を介さず細胞壁分解酵素を利用することで、RNPのPEG–Ca2+送達による遺伝子編集を実現可能である。
2. CRISPR-Casシステムによりシロイヌナズナ・ゲノムにスカーレスな配列インバージョンを生成
[出典] "Efficient induction of heritable inversions in plant genomes using the CRISPR/Cas system" Schmidt  C, Pacher  M,  Puchta H. Plant J. 2019-03-22.
  • SaCas9を受精卵特異的に発現させることで、3-kbと18-KBの間隔の異なる遺伝子座にて実現;T2世代でのインバージョン頻度 ~10%
3. 病因変異のみを異にする同質遺伝子細胞のペアを対象とするCRISPR-Cas9スクリーンにより、フォン・ヒッペル-リンダウ腫瘍抑制遺伝子VHLと合成致死を誘導可能な遺伝子を探索 
[出典] "VHL Synthetic Lethality Signatures Uncovered by Genotype-specific CRISPR-Cas9 Screens"
Sun N [..] Chung N. bioRxiv. 2019-03-26.
  • 淡明細胞型腎細胞がん (clear cell renal cell carcinoma: ccRCC)においてVHLの不活性化が高頻度に見られる。VHL遺伝子の状態だけを異にする同質遺伝子のccRCCs一組みを対象とするCRISPR-Cas9ルクリーン (isogenic CRISPR screening)により、VHLと合成致死の標的として、良く知られているmTORシグナル伝達パスウエイに加えて、DNA修復パスウエイとセレノシステイン生合成パスウエイを同定した。
4. マウスに移植した患者由来組織を特異的に標的可能としたCRISPR-Cas9により、迅速なin vivo機能ゲノミクスを実現
[出典] "Direct genome editing of patient-derived xenografts using CRISPR-Cas9 enables rapid in vivo functional genomics" Hulton CH [..] Rudin CM, Poirier JT. bioRxiv. 2019-03-26.
  • In vivoがん研究の前臨床モデルとして有用ながん患者由来組織の異種移植 (Patient-derived xenografts: PDXs)マウスにおいて、移植組織を標的とするゲノム編集を可能とするdox誘導性CRISPR-Cas9レンチウイルスベクター pSpCTREを開発
5. マウスES細胞においてSox2のエンハンサ3種類 (E1; E2; E3)のCRISPR/Cas9 KOにより各エンハンサーの作用を同定
[出典] "Enhancer-promoter association determines Sox2 transcription regulation in mouse pluripotent cells" Huang L, Li Q [..] Zhang Y. bioRxiv. 2019-03-28.