2021-10-05 共同責任著者の一人であるUCSFのDavid Juliuは,2021年ノーベル生理学・医学賞をピエゾチャネルの研究で知られるスクリプス研究所のArdem Patapoutianと共同受賞した.
(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/07/11)
(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/07/11)
- Corresponding authors: David Julius; Yifan Cheng (UCSF)
- UCSFのYifan ChengとDavid Juliu等は、界面活性剤で可溶化することで、カプサイシン受容体TRPV1の構造(分解能 3.4 Å)とワサビ受容体TRPA1の構造(分解能〜4 Å)を明らかにしていたが、今回、脂質ナノディスク技術とクライオ電顕を組み合わせによってラット由来のTRPV1の構造を天然状態を解き、脂質とリガンドの結合機構の構造基盤を明らかにした。
- リガンドが結合していない状態、超強力なバニロイド(vanilloid)・アゴニストであるレシニフェラトキシン(resiniferatoxin, RTX)とタランチュラ由来のクモ毒DkTxとの複合体、ならびに、カプサイシン受容体拮抗薬カプサゼピンとの複合体の構造を解き、TRPV1活性化モデルを提唱(参考図:(左)リガンド非結合状態構造;(右)カプサゼピンとの複合体構造)。
- [DkTx結合] TRPV1は閉構造においてもチャネルのポア上部が自発的に短時間開口し、毒素結合が結合可能になる → チャネルと毒素の結合界面に環状脂質が結合し三者複合体を形成して開口を安定化 → 脂質のホスファチジルイノシトール(phosphatidylinositide)がバニロイドの結合ポケットから遊離し、アロステリック作用によってチャネルの下部ポアが開口。
- バニロイド・アゴニストの結合や、熱刺激によっても、同様なアロステリック作用によって、TPRV1が活性化する。
- 膜タンパク質の機能構造解析は創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/07/10記事「HIV-1エンベロープ・スパイクの膜アンカリングの構造基盤」にも見られるように、脂質二重膜をできる限り忠実に再現した環境で行うことが必要である。
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