(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/07/18)
- [論文] Thermococcus onnurineus のタイプIV-CRISPR/CasシステムにおけるCas2の構造
- Corresponding author: Eui-jeon Woo (Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology)
- CRISPR/Casシステム全般において、外来DNA断片をCRISPRリピートへスペーサーとして取り込むステージ (adaptation stage)には、Cas1とCas2が必須とされている。研究チームは今回、T. onnurineus のタイプIV-CRISPR/Casシステムには、cas1 またはその相同遺伝子が存在しないことを見出した。
- X線結晶構造解析によりT. onnurineus Cas2 (Ton_Cas2)には、正電荷を帯びたアミノ酸 (Arg16; Lys18; Lys19; Arg22; Arg23)が界面に並んだ深く幅広いクレフトが存在することを見出した。E. coli のCas2 (Eco_Cas2)に見られるDNAを認識するループは存在しなかった。また、Eco_Cas2においてCas1結合を担うC末端に位置するヘアピン・モチーフも存在しなかった。
- タイプIV-CRISPR/Casシステムに独特なadaptation stageの機構が存在することが示唆される。
- [NEWS AND VIEWS] 細胞分裂時に変異するバーコード組込みによる細胞系譜追跡法
- Author: João H Duarte (Locus Addociate Editor)
- 細胞バーコード“GESTALT(genome editing of synthetic target arrays for lineage tracing)法”を紹介(CRISPR関連文献メモ_2016/06/10-2参照)
- GESTALT法は、CRISPR/Cas9の標的となる10種のサイトを含む〜250 bpの合成DNAをバーコードとする。この合成DNAを含む細胞に、Cas9と標的サイトに相補的な10種類のsgRNAsを送達することでランダムに生じる配列の挿入削除の蓄積が、細胞分裂の経過が刻まれたバーコードとなる。
- 原論文では、HEK293T細胞のin vitro 実験と、ゼブラフィッシュの胚から成体組織までの発生実験において、GESTALT法による細胞系譜追跡が可能なことを実証。
- GESTALT法にも細胞分裂で分岐していった系譜の間で同一の挿入削除が起こる可能性があることなどといった限界があるが、成人細胞においてCas9の発現を調節することで癌細胞を含む成人細胞の変化も追跡していくことが可能である。
- [CORRESPONDENCE] CRISPResso:CRISPR/Cas9ゲノム編集結果の精密な定量的評価と可視化を可能にするデータ解析パイプライン
- [背景] 増幅したゲノムのディープシーケンシングまたはホールゲノムシーケンシング (WGS)によってCRISPR/Cas9のゲノム編集結果を解析することは可能ではあるが、ゲノム編集の対象も修復機構も多様であり、また、シーケンシングエラーも無視することができないことから、その解釈は極めて複雑な作業となり、未だ標準的な手法が確立されていない。
[情報拠点注] 次記事の"CrispRVariants"もご参照ください。 - Corresponding authors: Luca Pinello (DFCI/Harvard TH Chan School of Public Health); Daniel E. Bauer (Boston Children's Hospital/DFCI/HMS); Guo-Cheng Yuan (DFCI/Harvard TH Chan School of Public Health)
- [CRISPRessoパイプライン] 低品質リード(配列)をフィルタリング → アダプター配列を削除 → リードを参照アプリコンとアラインメント → 相同組換え修復(HDR)由来と非相同末端結合(NHEJ)由来の割合を定量 → フレームシフトとインフレーム変異の割合を定量 → スプライスサイトを推定
- [CRISPResso評価結果]
- シュミレーションではシーケンシングエラー如何によらず偽陽性率0.1%未満
- HBB コーディング配列を標的とした変異導入と4塩基導入のゲノム編集結果のペアエンドディープシーケンシングデータを解析し、編集無し/NHEJ発生/HDR発生のアレルの判別やフレームシフトとインフレーム変異の定量など所期の性能を実証。また、HDRに続いてNHEJが発生したことを示唆するアレルの存在を発見。
- [CRISPRessoPooled/CRISPRessoWGS/CRISPRessoCompare/CRISPRessoPooledWGSCompare] CRISPRessoは、単一アンプリコンまたはプールしたアンプリコンのディープシーケンシングデータとWGSデータの解析も可能であり、また、2種類のCRISPResso解析結果の比較および複数領域をCRISPRessoPooledまたはCRISPRessoWGSで解析した結果の比較も可能。
- [CRISPResso関連URLs]
- 報告で使用された実験データのダウンロード先 “CRISPResso: sequencing analysis toolbox for CRISPR genome editing” (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE78729)
- プログラムダウンロード先:“Software pipeline for the analysis of CRISPR-Cas9 genome editing outcomes from sequencing data” (http://github.com/lucapinello/CRISPResso)
- Webアプリケーション利用先 “CRISPResso: Analysis of CRISPR-Cas9 genome editing outcomes from deep sequencing data” (http://www.crispresso.rocks/)
- [背景] 増幅したゲノムのディープシーケンシングまたはホールゲノムシーケンシング (WGS)によってCRISPR/Cas9のゲノム編集結果を解析することは可能ではあるが、ゲノム編集の対象も修復機構も多様であり、また、シーケンシングエラーも無視することができないことから、その解釈は極めて複雑な作業となり、未だ標準的な手法が確立されていない。
- [CORRESPONDENCE] CrispRVariants:ゲノム編集が生成する変異スペクトルの解析と図表化
- Corresponding authors: Christian Mosimann; Helen Lindsay; Mark D. Robinson (U. Zurich)
- CRISPR/Casのゲノム編集結果はシーケンシングデータから解析されるが、既存のツール (CRISPR-GAとCRISPEResso(*))は生成された変異を総合的にレポートし、アレル特異的なゲノム編集やモザイク現象の定量的解析に適応していない。CrispRVariantsは、シーケンシングデータから個々の変異アレルの解析と可視化を実現したR言語によるツールキットである。
(*)[情報拠点注] 前記事の"CRISPResso"もご参照下さい。 - 図1に複数のゼブラフィッシュ胚にENSDARG00000079624 (wtx)を標的とするsgRNAを注入した解析結果が例示されている:標的サイトのゲノム上の相対座標を横軸に変異の種類を縦軸にとり参照配列とゲノム編集後の変異配列のアライメントを表示(変異型は21種類);さらに、各種胚における変異型のヒートマップを並置
- [CrispRVariants関連URLs]
- Bioconductorプログラムダウンロード先: “Tools for counting and visualising mutations in a target location” https://www.bioconductor.org/packages/CrispRVariants
- 小規模データ解析用Webツール利用先:“CrispRVariantsLite” http://imlspenticton.uzh.ch:3838/CrispRVariantsLite/
- [Letter to the Editor] 相同組換え修復 (HDR)と非相同末端結合 (NHEJ)を定量化する
- Corresponding author: Jim Vadolas (Murdoch Childrens Research Inst./U. Melbourne)
- CRISPR/Cas9によって病因遺伝子変異を修復する遺伝子治療には、DNA二本鎖切断(DSB)の修復過程の中でNHEJを阻害しHDRの効率を高める手法が必要になる。この手法開発のために、HDRとNHEJをハイルスループットで定量化する方法を開発した。
- 野生型GFPの1塩基を置換(196T > C)すると青色蛍光タンパク質(BFP)が得られることが知られている。今回、CRISPR/Cas9と、HDR過程を介してにGFPからBFPへの変換を誘導するべく設計したssODNを組み合わせることで、HDRをBFPの蛍光で、NHEJを蛍光消失で、それぞれ定量する手法を開発し、K562-50細胞とHEK293T-EGFP細胞で実証した。
- この手法を利用することで、DSBの修復機構の中でHDRの比率を高める低分子やその他の条件をハイスループットでスクリーニングすることが可能である。
2 NEWS AND VIEWS→João H Duarte et al. “Tracing cell lineages with mutable barcodes.” Nat Biotechnol. 2016 Jul 12;34(7):725.
3 CORRESPONDENCE→Luca Pinello et al. “Analyzing CRISPR genome-editing experiments with CRISPResso.” Nat. Biotechnol. 2016 July 12;34(7):695-7.
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