(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/07/20)
- Corresponding author: Roger K. Sunahara (U. Michigan Medical School/UCSD School of Medicine)
- GPCRは細胞外からのシグナルを受容し細胞内へと伝達する装置である(参考図右参照)。
- フォトン、低分子、ホルモン、ペプチドあるいはタンパク質まで広汎なリガンドを受容するGPCRはリガンド結合によって膜貫通へリックス部位のコンフォメーションを変化させ、細胞内ループに結合したGTP結合タンパク質(Gタンパク質[α/β/γサブユニットで構成されるヘテロ三量体タンパク質])のGαサブユニットからのGDP遊離を触媒する。続いて、GDPが遊離したGαに細胞内のGTPが結合し、Gタンパク質がGαとGβγに分解し、それぞれが下流のエフェクターを調節して細胞応答が誘導される。
- 研究チーム(Brian K. Kobilkaを含む)先行研究で、X線結晶構造解析、水素-重水素交換質量分析および電顕単粒子解析によってGPCR、アゴニスト、および、Gタンパク質からなる3者複合体の構造をヌクレオチドが結合していない状態で詳らかにし、Gタンパク質に劇的なコンフォメーション変化が起き、それがアゴニスト結合で活性型になった受容体によって安定化されることを明らかにし、GPCRとGタンパク質の結合がヌクレオチド交換を誘導する機構を論じていた。
- 研究チームは今回、薬理学的解析と生化学的解析に基づいて、Gタンパク質上のヌクレオチド結合サイトとGPCR上のホルモン結合サイトとがアロステリック共役(allostetic coupling)の関係にあることを示した。
- GPCRへのアゴニスト結合によってGDPがGαから遊離した時点(参考図中の「Gタンパク質の活性化サイクルの概念図」の③から④)で、GαのC末端へリックスは受容体のコアに埋め込まれており、GPCRの細胞質側と細胞外側の面のコンフォメーション変化が固定化されている。
- 細胞外側では、オルソステリックなリガンド結合部位が、GPCRに結合したアゴニストを閉じ込めるコンフォメーションに固定化される。すなわち、アゴニストのGPCRヘの結合親和性が高まる。
- β2ARは、アゴニストが結合していない状態でもある程度のGタンパク質結合を生じて活性化し、それによってアゴニストが結合しない状態で、オスロステリックなリガンド結合部位が閉じたコンフォメーションに固定される。すなわち、GPCRヘのアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニストあるいはインバースアゴニストの結合が阻害される。
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