(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/07/23)
- [論文] デイジー・チェイン型遺伝子ドライブ:遺伝子ドライブを局所的かつ一時的にとどめるモデルを提唱
- Corresponding author: Kevin M. Esvelt (Media Laboratory, MIT)
- 遺伝子ドライブは特定の地域に生息する標的生物種だけでなく、地球上のあらゆる地域の標的生物種の遺伝子を改変してしまう可能性があることから、安全性と倫理の観点から議論(*)を呼んでいる。
- デイジーチェイン型遺伝子ドライブは、遺伝子ドライブシステムの構成要素、CRISPR、編集DNAおよびgRNAを異なる染色体に組み込んだ多段システムのモデルである。例えば、A要素がB要素をドライブし、B要素がC要素をドライブし、ドライブする要素が無いA要素は伝搬の過程で集団から徐々に失われていき、遺伝子ドライブの広がりが限定されることになる。
- デイジーチェイン型遺伝子ドライブ解説ビデオ(5分10秒):http://www.sculptingevolution.org/daisydrives
- (*) 米国National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine専門家委員会の“遺伝子ドライブ”報告:“Gene Drives on the Horizon: Advancing Science, Navigating Uncertainty, and Aligning Research with Public Values” 2016 June 8.
- [レビュー] CRISPR/Cas9による転写制御の原理、進展そして応用
- Corresponding authors: Lev Tsimring; Jeff Hasty (UCSD)
- CRISPR/Cas9を利用した転写因子の生化学的特性ならびに人工遺伝子回路設計と内在遺伝子ネットワークの多重調節への応用をレビュー。
- Cas9/dCas9による転写制御の基本(立体障害による抑制;daCas9へのエフェクター融合による活性化と抑制;dCas9に加えてsgRNAへのエフェクター融合による活性化 (SAM法);足場RNAを介したエフェクター融合による活性化と抑制)
- 内在性プロモーターにCRISPR/Cas9結合サイト導入した人工プロモーターと遺伝子回路の構築
- dCas9による転写制御の応用:機能獲得と機能損失;多重遺伝子の転写制御;多重遺伝子転写の時系列制御
- [論文] ヒト多能性幹細胞(hPSCs)のゲノム編集による膵臓への細胞系譜決定因子の同定と糖尿病
- Corresponding author: Danwei Huangfu (Sloan Kettering Institute)
- 特定の体細胞へ向けてhPSCsを分化させる手法は、疾患発生機構の解明に有用なツールである。一方で、hPSCsからの発生過程は、それぞれの段階において多くの因子が関わる複雑な過程であり、その解明は容易ではない。
- 研究チームは今回、TALENとCRISPR/Cas9ゲノム編集とhPSCの一定方向への分化を利用したiCRISPR法(Cell Stem Cell , 2014;Methods Enzymology , 2014)によって、膵臓発生における8種類の膵臓転写因子(PDX1, RFX6, PTF1A, GLIS3, MNX1, NGN3, HES1, ならびにARX)の機能を解析した。
- 膵臓発生過程においてマウスとヒトの間で保存されている必須遺伝子を確認
- 2型糖尿病の発症に関連する新たな膵臓発生機構を同定:RFX6が膵前駆細胞数の調節と膵内分泌細胞の分化に必要;膵臓β細胞分化におけるPDX1のハプロ不全;グルコース応答性β細胞形成にはNGN3が必要。
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