crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

1. 'Split-and-click'でsgRNAs調整の経費も時間も節約
[出典] "An artificial triazole backbone linkage provides a split-and-click strategy to bioactive chemically modified CRISPR sgRNA" Taemaitree L, Shivalingam A, El-Sagheer AH, Brown T. Nat Commun. 2019-04-08.

背景
  • CRISPR-Cas9技術の利用が研究室から診断と治療へと展開するにしたがって、利用目的に最適なそしてまたは大量なgRNAsの合成への必要性が高まっている。U. Oxfordの研究チームは今回、現行の化学合成経路や酵素反応経路に変わり、sgRNAを2分割してそれぞれを合成した後クリックケミストリーで合成するより効率的な'split-and-click convergent chemical route'を確立した。
スプリット
  • 標的DNAを探索するcrRNAの中で標的に合わせて組成を変えるべき領域に限定した~20塩基の可変RNAと、Cas9への結合を担う79塩基の固定RNAgとをそれぞれ合成する。前者では高純度な合成を実現し、後者は費用対効果が高い大規模な調整が可能である。このようにして、sgRNAを作成する度に96塩基の長いRNAを合成する必要がなくなり、また、固定RNAの合成を、sgRNAを調整する度に繰り返す非効率なステップを回避できる。
クリック
  • アルキンを帯びた可変 RNAとアジドを帯びた固定RNAを、銅触媒を介したアジド-アルキン環化付加反応環化付加反応CuAAC (Cu-Catalyzed Azide Alkyne Cycloaddition, Chem-Station, 2010-01-08)を介して結合しsgRNAを生成する (原論文Fig. 1引用下図左参照)。
Split & Click 1 Split & Click 3
評価
  • 原論文Fig. 3を引用した上図右の模式図にあるように、単一sgRNA調整とともにプール型sgRNAs調整も容易である。
  • 本手法はsgRNAの標的選択性を高める修飾やin vitro/in vivoでの安定性を高めるための修飾をが容易である
  • 可変RNAと固定RNAの間に形成されるアゾール結合は、sgRNAの機能に決定的な役割を果たす領域には干渉せず、DNA切断効率とオフターゲット作用はin vitro合成sgRNAと同等であった。
2. マイクロRNA (miRNAs)でCRISPR-Cas9をコントロールする
[出典] News & Views "MicroRNAs tame CRISPR–Cas9" Jouravleva K, Zamore PD. Nat Cell Biol. 2019-04-01.
3. Cas4-Cas1融合タンパク質が、PAMの効率的選択をドライブしCRISPRアダプテーションを制御する
[出典] "Cas4–Cas1 fusions drive efficient PAM selection and control CRISPR adaptation" Almendros C, Nobrega FL, McKenzie RE, Brouns SJJ. Nucleic Acids Res. 2019-04-02.
  • CRISPR-Casのシステム全てについてCas1とCas2によるアダプテーション (スペーサ獲得)過程は共通しているが、システムによって逆転写酵素、csn2cas4などの遺伝子が関与する場合があり、最近、Pyrococcus furiosusのI-DシステムやBacillus haloduransのI-AシステムにおいてCas4がアダプテーション複合体の一部であることを示唆された。また、クラスIのI-UとI-BおよびクラスII (V-B)においてcas4cas1の融合が見出された。
  • Delft University of Technologyの研究チームは今回、I-Uシステム由来のCas4/1融合タンパク質がPAMに適合するスペーサを高頻度で生成し、Cas4ドメインの変異がスペーサ獲得を低減することを見出した。
(*)アダプテーション過程関連crisp_bio記事
4. ゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーンにより、腸チフス毒素のヒト細胞内輸送機構を解明
[出典] ”Unique features in the intracellular transport of typhoid toxin revealed by a genome-wide screen” Chang SJ, Jin SC2, Jiao X, Galán JE. PLoS Pathog. 2019-04-05.
  • チフス菌とパラチフス菌の腸チフス毒素は、5量体のBサブユニットと、2個の酵素活性を帯びたAサブユニットで構成されており、Bサブユニットでヒト細胞表面の受容体に結合し、その後、内在化し細胞内の標的領域へ移動する。
  • Yale University School of Medicineの研究チームは今回、腸チフス毒素はその細胞内輸送を、ヒト細胞の逆行性輸送と小胞体分解機構の特定のエレメントをハイジャックして実現することを明らかにした (原論文Fig. 1引用下図参照)Typhoid toxin
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