crisp_bio

科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

1. ゲノムワイドCRISPRスクリーンによりH1ヒトES細胞の特性を制御する遺伝子を同定
[出典] "Genome-Scale CRISPR Screens Identify Human Pluripotency-Specific Genes" Ihry RJ [..] Kaykas A. Cell Rep. 2019-04-09.

 近年、CRISPR/Cas9による遺伝子スクリーニングが癌細胞では急速に進展してきたが、ヒト幹細胞への適用は小規模実験に止まっていた。Novartis Institutes for Biomedical Researchを中心とする米国ケンブリッジの研究グループは、ドキシサイクリン(dox)による活性誘導が可能なCas9 (iCas9)をAAVS1でノックインしたH1ヒトES細胞 (H1-hESCs)に、ゲノムワイド (90K)のsgRNAsをレンチウイルスベクターで導入した上で、dox非存在下で、自己再生可能なsgRNA-hPSCライブラリとして維持し、必要に応じてスクリーニングに供するシステムを構築し、hPSCにおけるゲノムワイドな遺伝子機能喪失実験の基盤を整えた(Graphical Abstract引用下図参照)。iPSC 1
 その上で、実証実験としてhPSCsの適応度 (自己複製能)制御因子、hPSCsの単一細胞クローンとしての生存を制御する因子および、多能性・分化能制御因子のスクリーニングを試み、既報の殆どに加えて新奇な遺伝子とネットワークを同定した。
  • 適応度の向上に必須な遺伝子としてhPSCs特異的な356種類を含む770種類を同定;一方で、TP53依存性細胞死に関与するとされていたPAMP1がhPSCsのDNA損傷に対する感受性を高めてhPSCsの適応度を抑制することも含めて、TP53と相互作用しDNA損傷とアポトーシスに関連する遺伝子のネットワークも同定 (Graphical Abstract 1)
  • 単一細胞としての生存に必須な遺伝子として76遺伝子を同定;一方でアポトーシス促進性遺伝子PAWRを細胞死誘導遺伝子として同定 (Graphical Abstract 2: 図の中DOCK阻害剤は、単一クローンに解離したhPSCsの維持に利用される)
  • FACSを利用したOCT4アッセイを介して、多能性の維持に必須な遺伝子113種類と、分化調節遺伝子99種類を同定し、OCT4関連遺伝子ネットワークを同定 (Graphical Abstract 3)
  • [注]下図は、Figgure 2と6から引用したTP53ネットワークとOCT4遺伝子ネットワーク図iPSC 2 iPSC 6
2. ゲノムワイドCRISPRスクリーンにより、機能未知の遺伝子を含むH1ヒトES細胞の必須遺伝子群を同定し、また、必須遺伝子プロファイルが培地に依存することを発見
[出典] "Essential Gene Profiles for Human Pluripotent Stem Cells Identify Uncharacterized Genes and Substrate Dependencies" Mair B, Tomic J, Masud SN [..] Moffat J. Cell Rep. 2019-04-09.
  • University of Torontoの研究グループは、米国研究グループと同じくdoxで活性誘導可能としたiCas9をノックインしたH1ヒトES細胞を対象として、MEFフィーダー細胞上とラミニン上で培養し、ゲノムワイドCRISPR/Cas9ドロップアウトスクリーニングを加え、適応度 (自己複製能)に必須な遺伝子群を同定した。
  • 同定したH1-hESCsの必須遺伝子群として、幹細胞生物学でこれまでに示唆されていた転写因子をコードするFOXH1とVENTXとともに機能不明な遺伝子C22orf43(DRICH1)、C17orf53およびZF転写因子ZNF34を同定した。
  • これまでに報告されてきた癌細胞生存の必須遺伝子群を統合し、H1-hESCs特異的な必須遺伝子群を特定した。このH1-iCas9に特異的な必須遺伝子群は組織と細胞型で共通であるが、その発現パターンは組織と細胞型ごとに大きく変動した。
  • また、必須遺伝子群に、MEF上培養では2,206種類、ラミニン上培養では1,562種類と、培地依存性が見られ、両者で共通な必須遺伝子は620種類であった。
  • TP53パスウエイ、PAWR、PAMP1H1-hESCsの増殖を抑制する因子であることを確認 (crisp_bio注:項目1と整合)。
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