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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

1. ZFNsおよびCRISPR/Cas9による遺伝子編集は、実験条件を最適化・精密化することで、細胞内在のP53によるDNA損傷応答を乗り越えて、造血幹細胞の機能を損なうことなく実現可能である
[出典] "Precise Gene Editing Preserves Hematopoietic Stem Cell Function following Transient p53-Mediated DNA Damage Response" Schiroli G, Conti A [..] Genovese P, Naldini L, Di Micco R. Cell Stem Cell. 2019-04-04. Online 2019-03-21; In Translation "Measure Twice, Cut Once: Therapeutic Editing of HSPCs Requires Precise Planning" Rau RE, Goodell MA. Cell Stem Cell. 2019-04-04.

 TALENやCRISPR/Cas9による遺伝子編集技術の臨床応用は、造血幹細胞・前駆細胞 (HSPCs)のex vivo編集を介した鎌状赤血球症やβサラセミアから始まるとみられている。臨床応用には極めて精密な遺伝子編集が必須であるが、昨今、オフターゲット編集の他に、オンターゲット部位に想定外の望ましくない変異が誘導されること (*1)や、p53の活性化を介したDNA損傷応答 (DNA damage response: DDR)が、CRISPR/Cas9によるiPSCsの遺伝子編集の阻害要因であること (*2)が報告され、また、p53阻害によってCRISPR/Cas9のHDR効率が著しく向上すること(*3)も報告されている。
 San Raffaele Telethon Institute for Gene Therapyを中心とするイタリアとフランスの研究グループは今回、ZNFsとCRISPR/Cas9による二本鎖DNA (dsDNA)切断 (DSB)が、HSPCの機能 (増殖・分化・移植後の生着と長期間増殖)に及ぼす影響の同定を目的として、先行研究で最適化していた実験条件でZFNsとCRISPR/Cas9-sgRNA RNPをヒト臍帯血由来CD34陽性 HSPCsにエレクトロポレーションし、DDRフォーサイの発生、細胞周期の進行、およびHSPCの亜集団における遺伝子発現を1細胞分解能で解析した
 編集標的は、HSPCsの機能に影響を与えないサイト (IL2RGのイントロン領域とセーフ・ハーバーのAAVS1領域)を選択したが、標的に対する特異性が極めて高いsgRNAsと'寛容な'sgRNAsの双方について分析した。さらに、HDR修復用プレートとしてをssDNAsとdsDNAsをAAV6で送達する影響も分析した。
  • TALENまたはCas9が誘導したDSBに対する応答は主としてp53を介したDDRパスウエイの活性化であり、全てのHSPCs亜集団において、単一のDSBに対しても発生した。
  • '寛容な'sgRNAsによりDSB数が増加するにしたがってDDRパスウエイがより長時間活性化され、細胞周期停止期間が延びHSCPsの成長が停止した。DDRパスウエイの活性は、ヌクレアーゼの用量に応じても高まった。
  • AAV6による修復テンプレート送達は、p53パスウエイの活性化を亢進するだけでなく、アポトーシスや炎症反応に寄与する遺伝子の発現を上方制御し、細胞周期の調節を担う遺伝子の発現を下方制御し、AAV6のウイルス因子を感知した自然免疫システムの活性が、HSPCsの機能を損なうリスクをもたらすことが示唆された。ただし、ssODNとdsODNはこの現象には関与していなかった。
  • Cas9-sgRNA RNPのエレクトロポレーション時に、一時的に、GSE56 (p53 R175H変異アイソフォーム)でp53を抑制すると、ゲノムの不安定性を誘導することなく、細胞増殖が部分的に回復し免疫不全マウスへの生着も改善された。
 "In translation"では「臍帯血由来の正常なHSCsを対象とした実験で得られた知見が、年齢、疾患、変異がさまざまな患者由来の血液細胞にも適応可能か」を次の課題としている。

2. CRISPR/Cas9はヒト細胞においてTP53の応答を介して細胞周期停止期間を伸ばす
[出典] "CRISPR/Cas9 Treatment Causes Extended TP53-Dependent Cell Cycle Arrest In Human Cells" Geisinger JM, Stearns T. bioRxiv. 2019-04-10.
  • CRISPR/Cas9が二本鎖DNA (dsDNA)を切断 (DSB)する構造基盤と機序は解明されてきたが、同じ標的dsDNA領域であっても細胞株によって編集結果 (DSBからの修復結果)が変動する分子機構は判然としていない。 Stanford UのGeisingerとSternsは今回、Cas9によるDSBが細胞周期に与える影響を、種々のヒト細胞株においてEdU (5 -エチニル - 2' -デオキシウリジン)を利用して分析し、CRISPR/Cas9が細胞株依存で細胞周期停止期間を延ばすことを見出した。
  • この細胞周期停止は、機能性のTP53とRB1に依存し、TP53のピフィスリン-αによる阻害やTP53のノックダウンによって緩和される。また、dsDNAを切断後もDNAに結合したままになるCas9の特性が、細胞のDSB認識と修復を遅らせることも見出した。
  • 以上から、TP53を一時的に阻害することで、機能性TP53を帯びている細胞のゲノム編集の実用化が実現できることが示唆される。
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