1. マウスES細胞ゲノムに~1,000のレポーターを挿入し、これを標的とする多重Cas9編集実験から、Cas9の活性が主としてsgRNAsと標的のゲノム上の位置に左右されることを同定
[出典] "Multiplexed Cas9 targeting reveals genomic location effects and gRNA-based staggered breaks influencing mutation efficiency" Gisler S, Gonçalves JP, Akhtar W, de Jong J, Pindyurin AV, Wessels LFA, van Lohuizen M. Nat Commun. 2019-04-08.
- CRISPR-Cas9の活性にgRNAが与える影響については知見が集積され、in silicoおよびin vivoでのgRNA設計支援・評価ツールも多数開発されてきている。一方で、標的がCRISPR-Cas9の活性に与える影響については、標的のクロマチン環境がCas9の結合・切断に及ぼす影響については報告がなされているが、Cas9が誘導する変異プロファイル (変異の頻度とパターン)に与える影響については判然としていない。
- Oncode and The Netherlands Cancer Instituteなどオランダの研究チームは今回、マウスES細胞における遺伝子発現の解析に成果をあげたTRIP (Thousands of Reporters Integrated in Parallel)*法によって、標的配列の細胞内でのゲノム上での位置が変異プロファイルに与える影響を解析した (* TRIP Webサイトhttp://trip.nki.nl/ 参照)。
- TRIP法は、数千のバーコードを付した同一配列のレポータ (integrated reporters: IRs)をトランスポゾンでゲノムにランダムに挿入し、このIRsの挿入位置と発現を解析することから、調節因子とクロマチン環境が遺伝子発現に与える影響をゲノムワイドで把握することを可能にした手法である。
- 研究チームは今回、TRIP法に則ってマウスES細胞ゲノムにIRsを挿入し、IRsを標的としたCas9による切断に誘導される変異プロファイルに加えて、21-ntのssODNをテンプレートを介した修復に由来する変異プロファイルに対して、sgRNA (3種類)、IR遺伝子座、ssODNおよびプロモーターが及ぼす影響を分析した (テストしたsgRNAsは3種類)。
- 実験は、同一プロモーター (マウスPGKプロモーター)を組み込んだ36 IRsを挿入したTIRP細胞株と、種々のプロモーターを組み込んだ~1,000IRsを挿入したTRIPプール細胞集団 について、行なった (Fig. 1引用下図参照)。

- その結果、変異プロファイルの変動はほとんど、sgRNAsとIR遺伝子座 (IRsはEGFPと同一配列であることから、3次元ゲノム上の位置)に依存することが明らかになった。
- 変異プロファイルのsgRNA依存性は特に挿入について顕著であり、研究グループは、突出末端の生成を介した修復も存在することを示唆した。また、変異プロファイルのIR遺伝子座依存性については、トラスクリプトーム、ゲノムおよびエピゲノム (transcriptional, genomic and epigenomic: TGE)との間に強い相関が見られなかったが、その原因として、マウスES細胞では細胞周期のS期が長いためにCas9のDNAへのアクセスがおしなべて容易であったことの影響と、TGE以外の要因が存在する可能性を示唆した。
2. タイプVI-D CRISPR-Casシステムにおいて、アクセサリータンパク質WYL1がエフェクターCas13dの活性を亢進する機構
[出典] "Structural insights into the modulatory role of the accessory protein WYL1 in the Type VI-D CRISPR-Cas system" Zhang H, Dong C, Li L, Wasney GA, Min J. Nucleic Acids Res. 2019-04-12;構造情報 PDB 6OAW: Crystal structure of a CRISPR Cas-related protein (2.2 Å 分解能)
- Ruminococcus sp. 由来WYL1 (RspWYL1)の全長構造を2.2 Å 分解能で決定し、生物物理学的解析も行なった結果、RspWYL1がそのC末端ドメインを介して二量体化しコンフォメーションを大きく変え、配列非選択的にssRNAに特異的に結合し、標的ssRNAをCRISPR-Cas13dへ呈示するモデルを提唱した。
- [参考] "Cas13dが、標的RNA切断とコラテラルなリボヌクレアーゼ活性とを有し、pre-crRNAを切断することを見出した。また、WYLドメインを含むアクセサリータンパク質の存在も見出し、WYLドメインとRHHドメインを帯びたアクセサリータンパク質WYL1がCas13dエフェクターの活性を亢進することを同定した" (引用元 2018-03-17 crisp_bioこれまでで最小かつヒト細胞で活性なCas13dの同定と解析2報 [第2項] Arbor Biotechnologies/NCBI報告
3. Cas1-Cas2がCRISPRアレイに然るべくスペーサーを格納する分子機序モデルを提案
[出典] "Selective Prespacer Processing Ensures Precise CRISPR-Cas Adaptation" Kim S, Loeff L, Colombo S, Brouns SJJ, Joo C. bioRxiv. 2019-04-16.
- CRISPR-Cas獲得免疫機構において、保存性が高いCas1-Cas2複合体が免疫記憶 (スペーサ)の形成を担っている。Delft University of Technologyの研究チームは今回、時空間分解能が高いsmFRET解析に基づいて、Cas1-Cas2が細胞内のDNA断片 (prespacers)を獲得しCRISPRアレイに組み込むadaptation機構のモデルを提案した。
- Cas1-Casは、DNAの長さとPAMに依存して、ssDNAと部分的に二重鎖のDNAを含む多様な形のprespacerを獲得する。Cas1-Cas2が獲得したprespacersは、エクソヌクレアーゼDnaQによってCRISPRアレイに組み込まれるサイズへと成熟する。PAM配列はCas1-Cas2によってDnaQから保護されことから、prespacersは非対称的にトリムされ、CRISPRアレイに正しい向きのスペーサとして組み込まれる。
4. 好塩性アーキアHaloarcula hispanicaにおいて、プライム型スペーサ獲得の活性が、crRNAの構造やサイズには依存しないことを見出した
[出典] "Primed adaptation tolerates extensive structural and size variations of the CRISPR RNA guide in Haloarcula hispanica" Gong L, Li M [..] Xiang H. Nucleic Acids Res. 2019-04-08.
- 中国科学院の研究チームは先行研究で、H. hispanicaのタイプI-B CRISPRシステムにおいて、halovirusに対する免疫応答がCRISPRアレイに内在していたスペーサを介したプライム型応答であることを同定していたところ、今回、変異誘発実験を介して、標的干渉 (interference)機能と異なり、プライム型アダプテーション (adaptation)の活性が、5'ハンドルの短縮、スペーサの短縮/伸長、そしてまたは3’ハンドル部の短縮/伸長には左右されないことを見出した。
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