[出典] "CRISPR-suppressor scanning reveals a nonenzymatic role of LSD1 in AML" Vinyard ME [..] Liu BB. Nat Chem Biol. 2019-04-15;"CRISPR-Scanning Towards New Drugs — drug discovery is difficult, but CRISPR might be able to help" Vinyard ME. Harvard university Blog. 2019-03-14.
ゲノムワイドCRISPRスクリーニングによって疾患の病因変異遺伝子ひいては病因変異タンパク質特定が容易になってきたが、創薬にはさらに、変異タンパク質の上で薬剤候補と相互作用する部位を特定する必要がある。
そこで、CRISPRシステムによってタンパク質コーディング遺伝子ひいてはタンパク質にランダムな変異を誘導し、細胞生存・増殖に必須のタンパク質部位を特定し、それを標的とする低分子を同定するCRISPR・スキャニング法が利用され始めた。また、薬剤候補存在下で細胞生存・増殖を維持そしてまたは亢進するタンパク質部位を絞り込み、それを標的とする低分子同定を進めるCRISPRサプレッサー・スキャニング (CRISPR-suppressor scanning)法も利用され始めた。
ハーバード大学のBrian Liauらは今回、急性骨髄性白血病 (AML)の治療標的とされているリジン特異的ヒストン脱メチル化酵素1 (LSD1)の阻害剤の作用機序を対象として、CRISPRサプレッサー・スキャニングによる解析を進めた。その結果、LSD1阻害剤は確かにLSD1の酵素活性を阻害するが、これまでの想定と異なりLSD1はAML細胞の生存に必須ではないことが明らかになった。また、LSD1阻害剤はLSD1の活性を阻害することでAML治療効果をもたらすのではなく、LSD1と転写因子 (GFI1B)との相互作用を破綻させることでAML治療効果をもたらすことも明らかになった。
CRISPRサプレッサー・スキャニングによってLSD1阻害剤が必ずしもAMLに奏功しない分子機構の一端が明らになり、また、CRISPRサプレッサー・スキャニングが創薬に有用であることが示された。
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