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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "A safe and potent anti-CD19 CAR T cell therapy" Ying Z, Huang XF [..] Zhu J, CHen SY. Nat Med. 2019-04-22

背景
  • 抗CD19キメラ抗原受容体 (CAR)T細胞療法は、著効を示す一方で、炎症性サイトカインの血清レベルの顕著な上昇を伴う重篤なサイトカイン放出症候群と神経毒性を誘発するリスクを伴っている。
概要
  • 北京大学、Marino Biotechnology Corp ならびにUniversity of Southern Californiaの研究グループは今回、4-1BBとCD3ζドメインの共刺激分子を組み込んだいわゆる第2世代(*)の抗-CD19 CAR分子のプロトタイプCD19-BBz(71)**のバリアントCD19-BBz(86)分子による再発性または難治性 (ClinicalTrials.gov I D NCT02842138)B細胞リンパ腫患者の第1相試験を行なった (Front Immunol 2019-03-19 から引用した下図「キメラ抗原受容体3世代」模式図参照;CAR3世代模式図
    ** 第2世代CAR分子を導入したT細胞はノバルティスファーマのキムリア (Kymriah)としてFDAに承認され日本でも2019年3月26日に承認された。
  • コホート25名の中で、2 × 108–4 × 108 CD19-BBz(86) CAR T細胞を投与した11名中6名が完全寛解した。神経毒性またはグレード1 を超えるサイトカイン放出症候群は、25名にわたり見られなかった。
  • 完全寛解に至った患者も含めて、血清中のサイトカインレベルがCAR-T細胞を注入後に有意に上昇した患者も見られなかった。
  • CD19-BBz(86) CAR-T細胞は継続的に増殖し、in vivoで免疫記憶細胞へと分化した。
CD19-BBz(86) 解説
  • 研究グループは、細胞外領域と細胞内領域に変異を導入したCD10-BBzバリアントのライブラリーを用意し、3次元構造予測プログラムPhyre2 (Nat Protoc 2009 ; usingPhyre2 YouTube 9m 2s)も利用し、T細胞に導入した際に、CD19-BBz(71)を導入したT細胞よりも、サイトカイン放出レベルが低く、抗アポトーシス性分子が高いバリアントを探索しCD19-BBz(86)を同定した。
  • CD19-BBz(86) は、CD8α由来の86アミノ酸を組み込んだバリアントである。細胞外ドメインと細胞内ドメインがそれぞれ55アミノ酸と7アミノ酸と、CD19-BBz(71)の45アミノ酸と3アミノ酸より長い。
  • CD19-BBz(86) を導入したCAR-T細胞はCD19陽性腫瘍細胞に暴露された場合の増殖速度がCD19-BBz(71) CAR-T細胞よりも遅く、サイトカイン放出レベルが低く、in vitroでもin vivoでもCD19陽性腫瘍細胞に対して強力な細胞溶解活性を維持した。
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