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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

1.  CRISPR技術により、アンドロゲン受容体の選択的スプライシング産物を帯びた前立腺癌モデル細胞を樹立し、そのPARP阻害剤感受性を同定
[出典] "A novel CRISPR-engineered prostate cancer cell line defines the AR-V transcriptome and identifies PARP inhibitor sensitivities" Kounatidou E [..] Gaughan L. Nucleic Acids Res. 2019-04-22.
  • アンドロゲン受容体 (AR)遺伝子の選択的スプライシング転写物 (AR-Vs)は、前立腺癌のアンドロゲン受容体療法に耐性をもたらす。Newcastle Universityと2University of Minnesotaの研究グループは、これまで存在しなかった全てのタイプのAR-Vsを帯びた前立腺癌細胞モデルを、全長ARを帯びた前立腺癌細胞株CWR22Rv1においてAR遺伝子のDNA結合ドメイン第5エクソンに、CRISPR-Cas9により終止コドンをノックインすることで作出した。
  • このCWR22Rv1-AR-EK (Exon Knockout)細胞株が全長ARを欠損していても、成長しアンドロゲン遺伝子を発現し、DNA損傷修復関連 (DDR)遺伝子群の発現を亢進し、また、AR-Vs欠失により放射線照射に対して感受性を示すようになることを見出した。
  • また、AR-Vsの転写機能がPARPの活性に依存し同時にPARPBPPARP2の発現を亢進して、PARP活性を上方制御し、PARPを阻害するとアンドロゲン遺伝子とDDR遺伝子群の発現が抑制され、細胞増殖が低減し、PARP阻害との合成致死療法の可能性が示された。
2. B型肝炎ウイルス共有結合閉環状DNA (cccDNA)の細胞内増殖に必須のDNAポリメラーゼをケミカルジェネティクスで同定
[出典] "DNA Polymerase alpha is essential for intracellular amplification of hepatitis B virus covalently closed circular DNA" Tang L [..] Guo JT. PLoS Pathog. 2019-04-26.
  • B型肝炎ウイルスの持続的感染を担うcccDNAは、感染した肝細胞の核内に潜在しウイルス転写テンプレートとして機能する3.2 kbのサイズのエピソームである。
  • Drexel University College of Medicine, FlowMetric DiagnosticsならびにBaruch S. Blumberg Instituteの研究グループは今回、HepAD38細胞におけるcccDNAの増幅に必須の宿主因子を、低分子 (アフィジコリンとCD437)による阻害とsiRNAサイレンシング・スクリーニング、ならびに、CD437に耐性をもたらす1アミノ酸変異のCRISPR Cas9 HDRによる導入実験から同定・確認した。
  • DNAポリメラーゼの中で、HBV de novo cccDNAのde novo生合成にκとλが必須であるのに対して、不完全環状DNA (relaxed circular DNA, rcRNA)からcccDNAへの変換にδとɛに加えでαが必須である。
3. CRISPR/Cas9遺伝子編集により、ヘテロ型骨形成不全症変異を帯びたヒトiPS細胞株を樹立
[出典] "Generation of a heterozygous COL1A1 (c.3969_3970insT) osteogenesis imperfecta mutation human iPSC line, MCRIi001-A-1, using CRISPR/Cas9 editing" Far HH [..] Bateman JF. Stem Cell Research 2019-04-23.
  • CRISPR/Cas9 HDRを介して、MCRIi001-AヒトiPSCのCOL1A1遺伝子に病因変異c.3969_3970insTを導入
4. ゲノムワイドCRISPRスクリーンにより、オートファジーとNRF2転写因子が密接関連することが裏付けたられた
[出典] "Genome wide CRISPR screen reveals autophagy disruption as the convergence mechanism that regulates the NRF2 transcription factor" Kerins MJ, Liu P, Tian W, Mannheim W, Zhang D, Ooi A. Mol Cell Biol. 2019-04-22.
  • 細胞の恒常性を維持する遺伝子群の発現を調節するNRF2転写因子を活性化するいくつかの分子機構が徐々に明らかになってきた。
  • University of Arizonaの研究チームは今回、17,996遺伝子を対象とするゲノムワイドCRISPR KOスクリーンにより、そのノックアウトがNRF2活性を持続させる273遺伝を同定し、そのうち18遺伝子がオートファジー関連遺伝子であることを見出した。この結果は、オートファジーの破綻がNRF2を活性化するとする報告や、NRF2がオートファジーに決定的な役割を果たしているとする報告と整合した。
5. [レビュー] 次世代個別化医療:神経変性疾患のCRISPRゲノム編集療法
[出典] REVIEW "Next Generation Precision Medicine: CRISPR-mediated Genome Editing for the Treatment of Neurodegenerative Disorders" Raikwar S [..] Zaheer A.
J Neuroimmune Pharmacol. 2019-04-23.
  • University of Missouriグループによるレビュー:CRISPR-Cas遺伝子編集ツール;各神経変性疾患におけるゲノム編集標的の一覧と各論
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