[出典] "Artificial sgRNAs engineered for genome editing with new Cas12b orthologs" Teng F, Cui T, Gao Q,  Guo L, Zhou Q, Li W. Cell Discov. 2019-04-23.

概要
  • State Key Laboratory of Stem Cell and Reproductive Biology (Beijing)の研究チームは今回、ヒト細胞ゲノム編集に利用されているタイプⅡCas9、タイプV-A Cas12aおよびタイプV-B Cas12bの中で、より小型で標的特異性がより高いCas12bゲノム編集ツールボックスを拡張した。
新奇Cas12bによる拡張
  • その特徴から応用展開が期待されるCas12bの中で実用になっているのはAsCas12bとAkCas12bの2種類だけであある。そこで、研究チームはゲノムデータベースのPSI-Blast検索から新たに同定・合成したCas12b4種類 (BhCas12b, Bs3Cas12b, LsCas12b, と SbCas12b)と、既知のAsCas12bとAkCas12bおよびAmCas12bとBsCas12bの8種類のCas12b(Figure S1引用左下図参照)について、dsDNA切断活性を測定した。
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  • ヒト293T細胞へ、各Cas12bと、その同系でCCR5DNMT1を標的とするsgRNAsを導入し、既知のAsCas12bとAkCas12bに加えて、4種類の新奇Cas12bもdsDNA切断活性を帯びていることを同定した (Fig. 1 - a/b引用右上図参照)。また、BsCas12bについては、多重sgRNAsを利用した4重同時編集が可能なことを実証した。
tracrRNA:crRNA (sgRNA)とCRISPRエフェクタの組み合わせの互換性を利用した拡張
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    二本鎖と近縁Cas9の組み合わせにPAMの調整を前提として互換性があること (NAR 2014; 左下図の上Figure 6 参照)、この互換性がCRISPRアレイのダイレクトリピートの保存性が高いCpf1/Cas12a (Cell 2015)の間にもあることが、報告されている。
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  • 研究チームは、8種類のCRISPRシステムの間で、Cas12bオーソログのアミノ酸配列と、pre-crRNA:tracrRNA二本鎖のDNA配列ならびに2次構造の保存性が高いことを見出し、前述の互換性の検証実験を行なった。その結果、AaCas12b、AkCas12b、AmCas12b、Bs3Cas12bおよびLsCas12b遺伝子座に由来するsgRNAsが同系のsgRNAsと互換であり、活性を示すことを見出した (As-sgRNAとAk-sgRNAの場合について、上図下Fig. 1-c/d参照)。そこで、CRISPRアレイが不明なCas12bに、同系ではないsgRNAsを組み合わせる実験を進めた。
  • crRNA:tracrRNA二重鎖が予測不可能であったD. inopinatus (DiCas12b)とT. calidus (TcCas12b)を合成し 、前述の8種類のCas12aそれぞれの同系sgRNAとの組み合わせについてdsDNA切断活性を測定し、TcCas12bが、5種類のCas12b (Aa; Ak; Am; Bs3; Ls)同系sgRNAsとの組み合わせによりdsDNA切断活性を示し、As-sgRNAまたはAk-sgRNAを利用した多重編集に利用可能なことを、見出した (Fig.1-e/f/g 引用左下図と、右下図Fig. 1-h参照)。
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  • さらに、CCR5遺伝子座を標的とするsgRNAsを、今回同定したCas12bオーソログ間でのDNA配列と2次構造の保存性に注目して37種類設計し(artificial sgRNA, artsgRNA)、TcCas12bとの組み合わせで活性を示す22種類のartsgRNAを同定した (artsgRNA13の例について右上図 i/j参照)。TcCas12bとAaCas12bおよびAsCas12aとFnCas12aにそれぞれartsgRNA13を組み合わせてindels頻度を測定し、artsgRNA13がTcCas12bとAsCas12bの活性を、AsCas12aを超え、標的遺伝子座に依存するが、FnCas12aと同じレベルまで亢進することも見出した (右上図 k 参照)。
 参考crisp_bio記事