[出典] "Synthetic and living micropropellers for convection-enhanced nanoparticle transport" Schuerle S[..] Bhatia SN. Sci Adv. 2019-04-26.
  • がん、心血管疾患、炎症性疾患など治療薬を患部へ送達するプラットフォームとして研究開発が広がってきたナノ粒子 (nanoparticles, NPs; 下図 PubMed "nanoparticle" AND "drug delivery" 検索結果参照)の実用化には、NPsを数々の生理的障壁を越えて患部組織へと効率的に送り込む技術が必要である。例えば、血管から標的組織へと効率的に移行させる技術である。PubMed
  • NPsの組織への移行は、拡散律速現象であり、NPs自身の物理化学的特性に左右されることから、NPの形状や表面特性の最適化が試みられ、外部磁場や超音波によるNPsの運動制御が試みられたが、基本的には拡散律速の範囲内であった。局所的な対流により拡散依存から脱することも試みられたが、カテーテルに依存する侵襲性の高い手法であった。
  • MITとETH Zurichの研究グループは今回、非侵襲的な局所的対流増加 (enhancing local fluid convection)を介してNPsの血管から腫瘍などの患部組織への移行を促進する2種類の手法、ABFとMTB、を開発し、シミュレーションとモデルシステムにおいて、その性能を評価した。
  • ABF (artificial bacterial flagellum)は、3次元リソグラフィーで成型したポリスチレンをスパッタリングによりニッケル・チタン合金で被覆した長さ36 μm・直径10 μmの単一の合成マイクロロボットであり、その動きを回転磁場で調節し (Fig. 1引用下図Aの左参照)局所的対流増加を実現する。
  • MTB (magnetotactic bacteria)は、高密度な走磁性バクテリアMagnetospirillum magneticumを回転磁場によって駆動可能な'生体磁性流体 (living ferrofluid)として利用し局所的対流増加を実現し、実質的にマイクロプロペラとして機能する(Fig. 1引用下図Aの右参照)。micropropellers
  • ABFもMTBも、コラーゲンマトリクスで仕切ったマイクロチャネルで構成した'血管からの漏出と組織移行'のマイクロ流体モデル (マイクロフルイディクスモデル)において、NPの移行効率を向上させることを確認した (Fig. 1引用上図B参照、流れ (Flow)と直角にNPチャネルからコラーゲンマトリックスへの蛍光NPs移行を分析)。
  • ABFの場合は、200-nmのNPsの流れと見合う逆方向の推進力をもたらす回転を与えて上図Bの中のマイクロフリュイディスク装置の中央部に止まるように調節し、コラーゲンへの浸透を顕微鏡観察し、MTBの場合は、MTB と蛍光NPsをマイクロチャネルに流し、コラーゲンマトリックスへの漏出を観察した。
  • 臨床応用に向けて解決すべき課題が残ってはいるが、ABFはステントに装着して体内に留置して薬剤の患部への送達を促進する利用法が考えられる。
  • MTBについては大量のバクテリア導入が第一の課題になるが、バクテリアの腫瘍ホーミング性や腫瘍微小環境での増殖性および回転するバクテリアに由来するせん断力が細胞のNPsの取り込みを促進する効果を期待でき、また、回転磁場の精密な位置極めが不要であり回転磁場を腫瘍組織全体にダンラムな方向に適用することで細胞移行を誘導可能な利点がある。