(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2015/12/03)
[注] 本記事のタイトルはNature 11月26日号の記事"Antibody anarchy: a call to order"に掲載されていた写真のキャプションの一部を訳したものです.
[これまで]
[これまで]
- 1994年から2011年までJournal of Comparative Neurology (JCN) の編集長を務めていたClifford Saperは、抗体を使った論文の評価をする術が無い事に気づき、 2006年に、投稿者に実験に使用した抗体に関する詳細な検証データを要求する"one-journal revolution"を起こした.その結果、JCNへの投稿を回避する研究者が増えたが、C. Spaderの試みはJCN Antibody Database (7520抗体を収録(2014年 V14))に結実している.
- 2006年以後の論文1万編で使われていた抗体を分析した結果、ポリクローナル抗体1,293種類、モノクローナル抗体755種類、そして、組換体抗体1種類という結果になったが、いまだに、ラベルにあるタンパク質と異なるタンパク質に結合する、新しいロットを使い始めたら過去の実験結果を再現できなくなった、といった嘆きが尽きない.
- Biocompare社によると研究用抗体のマーケットは25億ドル/年で年々増加している、一方で、抗体問題が実験研究にもたらした損失は少なくとも年間8億ドルに及ぶと見られている.抗体問題は、抗体の特性が不正確なことだけが原因ではなく、販売名が異なるにもかかわらず同一製造元に同一製品である場合があることも一因.
- [研究コミュニティーにおける抗体問題解決への動き]
2015年9月 Mathias Uhlén等がHuman Proteome Organization年会の機会に、Working group on antibodyvalidationの第1回会合を主催; 同月、Federation of American Societies for Experimental Biologyが抗体問題に関するラウンドテーブルを開催; NCIのAntibody Characterization Program; NIHは2016年1月から応募書類に抗体を含む研究資材の品質検証計画の記載を要求; Global Biological Standards Institute、メリーランド大学と抗体の標準向上に向けて協力;Structural Genomics ConsortiumのAled Edwards(トロント大学)の質量分析法による抗体評価など研究者自身による品質検証の試み
一方で、「抗体を利用する側の研究者の抗体問題に対する意識を高め無い限り抗体問題は解決しない」とする指摘もある. - [ベンダーの動き] Abcam、Thermo Fisher Scientific、Bio-Rad、Proteintechなどが、CRISPR/Cas9を使った遺伝子ノックアウトと細胞アッセイなどによる抗体の品質検証に取り組んでいる.
- 創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/09/10 Mathias Uhlénら、抗体を使った実験データの信頼性を高めるガイドラインを提案
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