出典] "Controlling CRISPR-Cas9 with ligand-activated and ligand-deactivated sgRNAs" Kundert K [..] Doudna JA, Kortemme T. Nat Commun 2019-05-09.
  • CRISPR-Cas9の活性を時空間的に制御する手法の開発が進められている。これまでに、Cas9またはsgRNAの改変による手法が開発されてきたが、UC Berkeley、UCSFおよびChan Zuckerberg Biohubの研究グループは今回、sgRNAに挿入したRNAアプタマーへのリガンド結合によるsgRNA、Cas9および標的DNAの三者の間の機能的相互作用の調節を介して、CRISPR-Cas9の活性を制御する手法を開発した (Fig. 1 引用下図参照)。なお、論文中では、リガンドによる制御を実現したsgRNAをligRNAと称している。ligand-controlled sgRNAs 1
  • 研究グループは、細胞膜透過性で細胞内で生合成されないテオフィリンと高親和性のテオフィリン・アプタマーを選択し、sgRNAへの組み込み位置と組み込み方を探った。組み込み方としては、sgRNAのステムの一部置換、または2つに分割したsgRNAの二量体化とapo状態とholo状態で塩基対合の切替えをもたらす3種類 (上図のc)をin vitroで評価し、塩基対合切替え(上図の c - 'Strand displacement')が最も効果的であることを見出した。また、テオフィリンの濃度が高いほど、CRISPR-Cas9の切断活性が高いことも見出した。
  • 'Strand displacement'型のsgRNAのうち10種類がin vitroでテオフィリンに応答し、ステムまたはヘアピン (上図 b 参照)にアプタマーを挿入した9種類がCRISPR-Cas9を活性化したが、(想定外にも、また、喜ばしいことに) nexus (上図 b 参照)にアプタマーを挿入した1種類はCRISPR-Cas9を不活性化した。すなわち、ligRNAによってCRISPRiの活性化と不活性化を選択可能になった。
  • 次に、E. coliP. aeruginousaS. cerevisiaeおよびHEK293T細胞において、ligRNAによるCRISPRiの活性制御を試みた。E. coliP. aeruginousaでは、in vitroと同様な成果が得られ、2種類のリガンドを利用して2種類の遺伝子の発現をそれぞれ独立に調節可能なことも確認したが、ligRNAは真核生物細胞では機能しなかった。