[出典] "Google backs a bid to use CRISPR to prevent heart disease" Regalado A. MIT Technology Review 2019-05-06 ; "Verve Therapeutics, a Gene-Editing Startup, Nabs Funding to Prevent Heart Attacks" Gormkey B. Wall Street Journal 2019-05-07.
  • ヒト遺伝子機能解析に、動物モデルでの相同遺伝子のノックアウト実験が利用されるが、近年、'human knockouts'に注目が集まっている (*1)。長年にわたり、特定の疾患の病因とされる遺伝子変異を帯びていても長寿を全うする個人が存在することが知られていたが、こうした事例をシステマテックに集積・解析しようとする試みである。
  • J. K. Joungが共同設立者の一人であるスタートアップ企業Verve Therapeuticsは、'human knockout'と相通ずるとみられるが、生活習慣や特別の処方によらずいわゆる悪玉コレステロールが低いレベルを維持している個人に特有の遺伝子変異 (例えば、PCSK9NPC1L1に見られる変異)を、CRISPR-Cas遺伝子編集技術を介して冠動脈疾患の予防に利用することを目指している。
  • Verveは、Alphabet*の傘下でFDAから心電図機能を備えてスマートウオッチの認可をFDAから獲得したVerilyと共同で、CRISPR-Casをナノ粒子で送達するとしている。Verveは、おそらく肝臓への送達を狙っていると思われるが、標的とする遺伝子群と共に、明らかにしていない (* AlphabetはGoogleの再編を経て設立された持ち株会社)。
  • Verveは、シリーズAラウンドで、Alphabet傘下の投資会社GVからの投資を含む5,800US$を調達したとして、ビジネスニュースとしても話題になっている。
  • Broad InstituteからVerveに合流しプロジェクトを率いるSekar Kathiresanは、はじめに、心臓発作を経験している成人を対象として、この遺伝子編集による心臓発作の再発防止から試みるとしている。
  • MIT Technology Newsの記事は、「Verveはこの予防的遺伝子編集を成人に限るとしているが、 ヒト胚への適用は極めて'魅惑的'である。CIRPSRbabiesでヒト胚ゲノム編集について国際的な物議を醸し出したJiankui He (賀建奎) (*2)は、心臓疾患予防の観点からヒト胚におけるPCSK9遺伝子編集も試みていた」と結ばれている。
 参考crisp_bio記事