(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/03/19)
  • 3月15日のScience Newsで、cfDNAの組織特異的なメチル化パターンあるいはヌクレオソーム・フットプリントによるcfDNA由来組織の特定やがんの診断の可能性を示した論文3報が取り上げられた:Benjamin GlaserRuth ShemerYuval Dorらイスラエスを始めとする国際チーム(論文1)、Yuk Ming Dennis Loら中国チーム(論文2)ならびにJay Shendureら米国チーム(論文3)の研究成果である.
  • [論文1]
    • [手法] 組織特異的なメチル化(methuylome)データベースを利用して、細胞型に特異的なDNAメチル化パターンを同定しておき、特徴的なメチル化を示すサイトに絞ってcfDNAをバイサルファイトシーケンシング法で解析して得たメチル化パターンと照合する(論文2のゲノムワイドのメチル化解析よりも廉価で高速).
    • [実証実験] 膵臓β細胞由来DNAを最近1型糖尿病と診断されて膵島移植を受けた患者で同定;オリゴデンドロサイト由来DNAを、再発性多発性硬化症患者で同定;神経細胞/グリア細胞由来DNAを頭部外傷または心停止のために脳に損傷を受けた患者で同定;膵臓外分泌腺由来DNAを膵臓癌と膵炎の患者で同定(膵臓癌と慢性膵炎との間にメチル化パターンの差異が存在したが、癌特有の遺伝子変異を組み合わせることで膵臓癌と膵炎をより明確に判定可能)
  • [論文2]
    • [手法] ゲノムワイドでのバイファルファイトシーケンシングを行い、組織特異的なメチル化パターンを探索する.
    • [実証実験]
      • 妊婦、骨髄移植患者、肝移植患者および肝細胞癌患者を対象にしたが、ほとんどの場合、cfDNAの多くが白血球由来であった.
      • 妊婦の場合は、胎盤由来cfDNAが、胎児特異的マーカと相関;骨髄移植患者と肝移植患者では、臓器ドナー由来のマーカが存在;肝細胞癌患者の場合は、肝細胞由来cfDNAが増加し、示しこれは癌特有のコピー数異常と整合;
  • [論文3]
    • [手法] cfDNAのディープシーケンシングによってin vivo でのヌクレオソーム占有領域を対象とする高密度なゲノム全域にわたる地図を構築しておき、得られたcfDNAのヌクレオソーム・フットプリントを照合していく.
    • [実証実験]
      • 健常人のcfDNAの場合、cfDNA地図から得られるヌクレオソームの間隔がリンパ球とミエロイド細胞のエピジェネティクスな特徴と強く相関し、cfDNAが造血細胞系譜由来であることが示唆された.
      • 5名のがん患者(小細胞肺癌;扁平上皮細胞肺癌;結腸直腸腺癌;肝細胞癌;乳腺管癌)のcfDNAのヌクレオソーム・フットプリントには、健常人のcfDNAには見られないがん細胞に特異的な特徴が見られ、また、がん型との相関も見られた.
  • すでにダウン症の新出生前診断にcfDNAが利用されているが、 cfDNAによる診断を癌を始めとする疾患に広げていくために、大規模な実証実験の実施と実験技術も普及型への進化が待たれる.