(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/10/08)
- ナフィールド生命倫理審議会 (NCB: Nuffield Council on Bioethics)は1991年にNuffield財団によって設立され、1994年からは財団に加えて英国Medical Research CouncilならびにWellcome Trustの資金で運営されている独立機関であり、生命倫理の分野で、英国政府の政策に対して影響力を有し、国際的にも高く評価されている。今回、本文128ページにわたる報告書“Genome editing: an ethical review” を発表した。
- 生命倫理の観点および実現可能性の観点から急ぎ精査すべきゲノム編集技術の応用分野は、遺伝病の治療と、食糧増産を目的とする家畜改良である。
- ヒト生殖に際しての介入については、現時点での技術的限界(オフターゲット作用などによる予期せざる変異の生成と継承)に起因する問題と、遺伝子治療を超えたヒトの機能向上(human enhancement)への展開に関わる問題が存在する。
- 家畜改良においては、食品としての安全性が最も大きな課題である。2017年から稼働するNuffield Council on Bioethics Working Party議長John Dupré(一般向け講演(YouTube 〜23分))によると 「ゲノム編集技術は、これまでの定義でいう遺伝子組換え食品と非組換え食品との区別をほとんど不可能にする(*)。(地球上から飢餓をなくすために必要な)食糧増産にゲノム編集技術をどのように役立ていくのか、広く議論していく必要がある」。
(*)[情報拠点注] ゲノム編集技術で改変した家畜には外来遺伝子が残存しないことから、天然の変異との識別が困難であり、したがって、これまでのGMO(遺伝子組換え生物)由来の食品を前提としたトレーサビリティーが成り立たない。
Nuffield Council on Bioethics 報告書→Nuffield Council on Bioethics. “Genome editing: an ethical review” 2016 September.
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