1. Cas12a近縁Mad7により、ゼブラフィッシュとヒト細胞株のCRISPRツールボックスを拡充
[出典] "Expanding the CRISPR toolbox with Mad7 in zebrafish and human cells" Wierson WA, Simone BW [..] Ekker SC, Essner JJ. bioRxiv 2019-05-25.
- CRISPRゲノム編集システムのエフェクターとしては、特許係争が続きながらも、SpCas9が最もよく利用されている。一方で、エフェクターのサイズ、DNA結合の動態、核酸分解機構、およびPAM依存性は多様であり、SpCas9を超えるSpCas9変異体の作出とともに、新たなエフェクターの探索が続いており、Cpf1 (Cas12a)、C2cs (Cas13a)など、ゲノム編集ツールとして有望なエフェクターが同定されてきている。
- Iowa State UniversityとMayo Clinicの研究グループは今回、スタートアップ企業Inscriptaが特許取得しながらも産学にロイヤリティーフリーで提供 (MADzymes Terms & Conditions)しているエフェクターMAD7(*1)の活性を、ゼブラフィッシュとヒト細胞において検証しその結果をbioRxivに投稿した。
- MAD7は、InscriptaがMadagascarに因んで命名したCRISPRエフェクターMADzymesの一種であり、MAD7は、Eubacterium rectaleから発見されたCas12a (Cpf1)*に由来する (* Acidaminococcus sp由来Cas12aの近縁とされている)。MAD7のサイズ、PAMおよびgRNAの長さはそれぞれ、1,262アミノ酸、5’-YTTN-3' PAM、42または56塩基である。
- 蛍光レポータを利用した実験により、CRISPR/Mad7がCRISPR/Cas9よりも効率的にDNAを修復することを見出した。また、先行研究で開発しCas9またはTALENで精密かつ効率的なノックインを実現した'GeneWeld' (*2)のエフェクターとしてMAD7を組み込み、CRISPR-Cas9と同等のノックイン編集効率を達成し、また、ヒト細胞株における多重遺伝子座の同時編集も実現した。
参考crisp_bio記事
- (*1) CRISPRメモ_2018/07/19 (7件) [第6項目] Inscripta社CRISPR-MADzymesの特許成立
- (*2) 2018-10-05 GeneWeld:短い相同配列を利用したCRISPR/Cas9編集により精密かつ効率的ノックインを実現
2. CRISPR/Cas9によるSaccharomyces cerevisiaeにおけるrDNA複製開始点の編集が、フェノタイプとジェノタイプに与える影響
[出典] "Phenotypic and genotypic consequences of CRISPR/Cas9 editing of the replication origins in the rDNA of Saccharomyces cerevisiae" Sanchez JC [..] Brewer BJ.bioRxiv 2019-05-24.
- 近年、リボソームDNA (rDNA)の機能として、リボソーム生成の他に、その変異と細胞周期調節、寿命および癌化との関連に関心が高まっている。
- University of Washington, Seattleの研究グループは今回、CRISPR/Cas9により、rDNAのコピー全て (~150)について複製開始点の削除、または、複製開始点の一部のATリッチ配列のGCリッチな配列へを実現し、その実験プトロコルをbioRxivに投稿した。さらに、複製開始点削除が細胞の増殖と寿命を抑制し、形質転換細胞において配列置換が驚くほど高頻度に発生することも、投稿した。
- 関連投稿:"A method for simultaneous targeted mutagenesis of all nuclear rDNA repeats in Saccharomyces cerevisiae using CRISPR-Cas9" Chiou L, Armaleo D. bioRxiv 2018-03-05;CRISPR-Cas9によるSaccharomyces cerevisiaeのrRNA 150リピート全てのSSU内標的サイトに同時に継代可能な点変異またはイントロン導入を実現
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