多剤耐性菌ファージ療法の症例
多剤耐性アシネトバクター
Cas3を組み込んだファージ療法の治験 (予定)
[出典] "Scientists Modify Viruses With CRISPR To Create New Weapon Against Superbugs" npr (National Public Radio) 2019-05-22 5:01 AM ET
退役後に米国内で銃撃を受け胸部から下が麻痺していたAlphonso Evans氏(67歳)は、2年前に膀胱への感染症の疑いて、Augusta VA Medical Center VA medical centerに入院し、骨への感染が検出され、肺炎を発症し、集中治療室で治療を受けることになり、感染菌が既存の全ての抗生物質に対して耐性を獲得したスーパバグであることが同定された。
脊髄損傷部門のMichael Priebe医師は、Locus BiosciencesがCRISPR-Cas3に基づいて開発した遺伝子改変バクテリオファージ3種類のカクテルによるスーパバグ治療の安全性と効用を、Evans氏を含む30名のコホートにおいて評価する第1相試験を2019年中に開始することを計画している。
前述の3件の症例は対照群が存在しない個別化医療の例であり、このようなファージ療法の治験が広がることが期待される。
[Cas3関連crisp_bio記事]
多剤耐性アシネトバクター
[出典] "Development and Use of Personalized Bacteriophage-Based Therapeutic Cocktails To Treat a Patient with a Disseminated Resistant Acinetobacter baumannii Infection" Schooley RT, Biswas B et al. Antimicrob Agents Chemother. 2017 Sep 22;61(10).
UCSD、Naval Medical Research Centerなどの米国研究グループは、多剤耐性菌のAcinetobacter baumannii感染症を併発している壊死性膵炎を伴う68歳の糖尿病患者に適合したバクテリオファージ療法を開発した。
患者から分離したA. baumanniiを溶菌するファージを9種類同定し、それらの静脈注射と膿瘍空洞への経皮的注入により、A. baumanniiの減少と健康状態の改善が見られた。また、A. baumanniiはファージ療法に対する耐性を獲得したが、ファージの組み合わせを変えていくことで、対処した。
患者から分離したA. baumanniiを溶菌するファージを9種類同定し、それらの静脈注射と膿瘍空洞への経皮的注入により、A. baumanniiの減少と健康状態の改善が見られた。また、A. baumanniiはファージ療法に対する耐性を獲得したが、ファージの組み合わせを変えていくことで、対処した。
多剤耐性緑膿菌
[出典] "Successful adjunctive use of bacteriophage therapy for treatment of multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa infection in a cystic fibrosis patient" Law N [..] Schooley RT, Aslam S. Infection. 2019 May 17.
UCSDの研究グループは今回、嚢胞性線維症(26歳)であり、肺炎、呼吸不全およびコリスチンの副作用である腎不全を発症し、肺移植を待っている患者に対して、ファージ療法 (4種類の溶菌ファージのカクテル, 6時間ごとに8週間)と抗生物質投与の併用療法を施し、開始から100日間緑膿菌による肺炎が再発せず、嚢胞性線維症も悪化せず、9ヶ月後に両肺移植に成功した症例をInfection誌にて報告した。
スーパーバグMycobacterium abscessus
[出典] "Engineered bacteriophages for treatment of a patient with a disseminated drug-resistant Mycobacterium abscessus" Dedrick RM, Guerrero-Bustamante CS [..] Hatfull GF, Spencer H. Nat Med. 2019 May;25(5):730-733. Online 2019-05-08.
Great Ormond Street Hospital (英国)、University of PittsburghならびにUCSDの医師と研究者のグループは今回、既存の抗菌薬全てに対する耐性を獲得した病原菌、スーパバグ、の感染に対するファージ療法の可能性を示した。
M. abscessusの感染が、肝臓、肺から皮膚にまで広がっていた15歳の嚢胞性線維症患者に、両肺移植手術後に、溶菌ファージ3種類のカクテルの投与と皮膚への塗布を開始し、数週間で、創口閉鎖、肝機能の改善および皮膚病変の減少が見られた。M. abscessusは完全には除去されておらず注射と塗布を継続しているが、患者は日常生活を送れるまでに回復している
溶菌ファージは、University of PittsburghのG. Hatfullらが~15,000種類のファージ・コレクションからスクリーンしたM. abscessus subsp. massilienseを溶菌するファージMuddy、ならびに、Bacteriophage Recombineering of Electroporated DNA (BRED) に拠る遺伝子編集を介して溶菌性を持たせた ZoeJとBPs である (Muddy, ZoeJとBPsはスクリーン後に命名)。
Cas3を組み込んだファージ療法の治験 (予定)
[出典] "Scientists Modify Viruses With CRISPR To Create New Weapon Against Superbugs" npr (National Public Radio) 2019-05-22 5:01 AM ET
退役後に米国内で銃撃を受け胸部から下が麻痺していたAlphonso Evans氏(67歳)は、2年前に膀胱への感染症の疑いて、Augusta VA Medical Center VA medical centerに入院し、骨への感染が検出され、肺炎を発症し、集中治療室で治療を受けることになり、感染菌が既存の全ての抗生物質に対して耐性を獲得したスーパバグであることが同定された。
脊髄損傷部門のMichael Priebe医師は、Locus BiosciencesがCRISPR-Cas3に基づいて開発した遺伝子改変バクテリオファージ3種類のカクテルによるスーパバグ治療の安全性と効用を、Evans氏を含む30名のコホートにおいて評価する第1相試験を2019年中に開始することを計画している。
前述の3件の症例は対照群が存在しない個別化医療の例であり、このようなファージ療法の治験が広がることが期待される。
[Cas3関連crisp_bio記事]
- 2019-04-10 Cas9はスイスアーミーナイフ、Cascade-Cas3は自走するシュレッダー
- CRISPRメモ_2018/07/21 [第2項] バクテリオファージは協働してCRISPR-Cas3/-Cas9免疫応答を抑制する
- CRISPRメモ_2018/06/09 (Cascade/R-loop/Cas3の構造; スタートアップの新しい波; 倫理・規制の議論) [第1項] タイプI-E CRISPR Cascade-Casシステムによる二本鎖DNA切断の構造基盤
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