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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

[出典] "Targeted homology-directed repair in blood stem and progenitor cells with CRISPR nanoformulations" Shahbazi R [..] Adair JE. Nat Mater 2019-05-27;"Special delivery: Gold nanoparticles ship CRISPR cargo" Siegel J. Fred Hutch News Service 2019-05-27
  • Fred Hutchinson Cancer Research CenterとUniversity of Washington, Seattleの研究チームは、エレクトロポレーションやウイルスベクターに替えて19 nm径の金コロイドナノ粒子を担体として、crRNAとCas12aを吸着させ、ポリエチレンイミンで被覆し表面電荷をカチオン性にし、さらに相同組み替え修復用ドナーテンプレートとなるssDNAも加え、造血幹細胞において、精密で効率の良い遺伝子編集が可能なことを実証した (Fred Hutch News Service 2019-05-27の挿入図高精度版参照)
  • 金コロイドナノ粒子は、 エンドソームを介して造血幹細胞に侵入し、細胞内で分解されることなく核に局在し、細胞毒性を示さなかった。編集効率は10 - 20%であったが、遺伝子編集が実現した細胞が損傷されていないことが重要である。
  • 本手法により健常人由来の造血幹細胞において、HIV療法と鎌状赤血球症/サラサミア療法を念頭に、それぞれCCR5遺伝子の破壊とγグロビンの発現亢進を実現し、モデルマウスに注入したところ、遺伝子編集造血幹細胞の効果は8週間でピークに達し~4ヶ月間持続した。また、遺伝子編集された血液細胞は、骨髄細胞、脾臓および胸腺でも見られた。
  • 責任著者のAdair JEは2016年に、先進的な施設が存在しない地域での遺伝子治療を可能とすることを目指して、1日でレンチウイルス遺伝子導入造血幹細胞を生成可能な半自動装置 'gene therapy in a box'を開発し (*)、筆頭著者としてNature Communication誌(*)に発表していたが、金コロイドナノ粒子による送達法を確立できたことで、より廉価で簡便な 'gene therapy in a box'が現実になるとした。
  • (*) "Gene therapy goes global: Portable device could make future cancer, HIV cures affordable" Engel M. Fred Hutch News Service 2016-10-20;解説図 "Point-of-Care Blood Stem Cell Gene Therapy";論文 "Semi-automated closed system manufacturing of lentivirus gene-modified haematopoietic stem cells for gene therapy" Adair JE et alNat Commun 2016-10-20.
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