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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/10/16)
  • Corresponding authors: Alice B. PopejoyStephanie M. Fullerton (U. Washington, Seattle)
  • 人類集団の遺伝的背景は多様であり、薬剤は、集団によってその効能が低下したり、さらには、健康被害を生じる可能性を帯びている。一方で、遺伝的背景(主としてSNPsの頻度)と疾患や量的形質との関連を解析するゲノムワイド関連解析(GWAS)の研究対象が長年にわたって欧州系に著しく偏っている。
    • 2009年にGWAS catalogue (NHGRIとEBIが共同で構築・運用)を分析したところ、当時のGWAS373件の対象170万サンプルの96%が欧州系であった。2016年に再分析したところ、欧州系の割合が3,500万サンプル(GWAS 2,511件)の81%へと減少し、非欧州系の割合が増加した。この増加分のほとんどはアジア系の増加によるもので、アフリカ系の増加は2.5%、ラテンアメリカ系とヒスパニック系の増加は0.5%に止まり、各地域原住民の割合はやや減少し、欧州系への偏りが続いていることには変わらない。
    • GWASに対して、近年盛んになってきたエキソーム解析では民族の多様性がいくらか改善されている。国際Exome Aggregation Consortium (ExAC)は、60,000サンプルのデータを集積しているが、欧州系は60.4%であり、アフリカ系が8.6%などとなっている。米国のTrans-Omics for Precision Medicine whole-genome sequencing projectは62,000サンプルのデータを蓄積しているが、欧州系50%、アフリカ系30%などとなっている。
    • 何れにしても、遺伝型と疾患を始めとする表現型の相関に関するデータが欧州系に偏っていることは変わっていない。
    • 欧州系への偏った基礎データは、非欧州系民族において、誤った診断と診療が行われる非精密医療が広がるリスクを高める。また、少数民族のGWASが他民族ににとっても有用な知見を示唆した事例が存在している。
    • 今後、研究現場からファンディングエージェンシーまで全ての階層で意識を変えて、非欧州系のデータを増やさない限り、精密医療は実現しない。
  • [注] COMMENTが掲載されたNature 2016年10月13日号には、人の地域的拡散の観点からの集団遺伝学研究ではあるが、地域的に多様なヒトゲノム解析が報告されている:
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