(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2014/07/23)
  • Gene driveの実用化に関する論説が7月17日号のScienceeLIFEに掲載された。Gene driveは、英国Imperial CollegeのAustin Burtの手になる2003年の論文"Site-specific selfish genes as tools for the control and genetic engineering of natural populations"を端緒として広がったコンセプトである。具体的には、非メンデル遺伝する利己的遺伝子に倣って、有性生殖する特定の生物集団をターゲットとして、世代交代を重ねる中で特定の遺伝子を有する集団へと置き換えていく戦略である。
  • Gene driveをコントロールする技術によって、感染症を媒介する生物や駆除剤に抵抗性を得た害虫や雑草への対処や、外来侵入種の絶滅が可能になる。例えば、ハマダラカのゲノムを編集して、マラリア原虫に抵抗性を持った集団に置き換えることによって、マラリアを終息させる戦略が考えられる。
  • いうまでもなく、gene driveの実用化には、ターゲットとする生物種に意図せざる形質が現れず、また、ターゲット以外の生物種には影響しないといった安全性が保証される事が前提である。
  • Austin Burtの論文から10年、新たなゲノム編集技術"CRISPR-Cas9"によるgene driveの具現化について、MITのKenneth A. Oye等とHarvard Medical SchoolのGeorge M Church等が、研究開発の将来を展望し、安全性と規制について論ずるとともに、社会的受容を得ながらこの新しい技術の研究開発を進めていく事が肝要であると提言した。