(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/03/21)
  UCSDのV. M. GantzE. BierはMCR法を開発し、Drosophila の劣性変異ヘテロ接合をホモ接合に転換し、遺伝子ドライブ(gene drive)を実現した.
  • 自己触媒型で進む挿入変異を3成分のコンストラクトを使うCRISPR/Cas9技術で実現した:体細胞でも生殖細胞でも発現するCas9;対象遺伝子を標的とするガイドRNA(gRNA);Cas9/gRNAのカセットの上下流に、対象遺伝子の切断サイトの左右領域と一致する配列をそれぞれ結合.
  • Cas9による遺伝子切断サイトに相同組み換え修復機構によって挿入されたCas9/gRNAカセットは、発現して、対立遺伝子にもCas9/gRNAカセットを挿入する.このトランス変異導入法をMCR法と命名した.その実効性を、X染色体上のyellow(y)遺伝子を標的とするgRNA、vasa-Cas9および〜1kbの相同配列からなるy-MCRコンストラクトが、F1世代そしてF2世代へと継承され、F2世代の95〜100%がy-表現型を示すことで、確認した.
  • 本実験は、UCSDとの安全性に関する議論を経て、指紋認証を備えた5重扉を備えた研究室内で3重の試験管を用いて行われた.Scienceの記事NEWS | IN DEPTHによると、HMSのG. Churchは、「意図しない変異が広がることに対する評価がされていないこの研究は出版されるべきではなかった」とコメントした.Church研究室では、安全性を確保するためにCas9とgRNAを同一カセット内ではなく分離して導入することによって、酵母での遺伝子ドライブを実現している.UCSDチームのE. Bierは、「その方法はショウジョウバエに適用できない」、「隠し事をしては事を成し遂げられない.公にして議論を求めるべき」と反論している.また、論文の中で、MCR研究が健全に発展していくように、組み換えDNA技術黎明期に方向づけをしたアシロマ会議に倣った集会を開催することを提案している.
[注] Church研究室のWebサイトのニュース欄にNatureの記事からNBCのニュースまでヒトゲノム編集に関する記事・ニュース
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