(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/10/25)
- Corresponding author: 水島 昇(東京大学)
- オートファジーが誘導された細胞では、隔離膜(isolation membranes)が生成され細胞質を、完全に閉じられた二重膜のオートファゴソーム(autophagosome)へと包み込んでいく(参考図内 図1参照)。このオートファゴソームにはSNARE syntaxin17(Stx17)がリクルートされ(参考図内 図2参照)、オートファゴソームはやがてリソソームと融合してオートリソソーム(autolysosome)となり、オートファゴソーム由来の内膜と共に取り込まれていた細胞質が分解されていく。このオートファジー経路に関与するオートファジー因子は、2016年10月までにAtg1からAtg41 まで特定され、その機能解析が続いている。
[情報拠点注] 酵母でのオートファジータンパク質と相同なヒトのオートファジータンパク質は、ATGnとは異なる名称が付されている。
(Autophagy Database 参照) - これまで、オートファゴソームの形成にはユビキチン様ATG因子群の結合反応系(以下、ATG結合システム)が必要とされてきた。研究チームは今回、オートファジーの前半で機能するATG因子群を欠損した場合はオートファゴソームが形成されないが、オートファジーの後半で機能するATG因子群が欠損していてもStx17陽性のオートファゴソーム様構造が生成され、リソソームに融合し、生成されたオートリソソームにおける内膜分解も起きることを見出した。ただし、オートファゴソームの生成は遅延し、さらに続く内膜分解は著しく遅延し、ATG結合システム欠損細胞ではオートファジー経路が強く抑制されることが明らかになった。
- ATG結合システムは、STX17のリクルートやソソームとの融合には必須ではなく、むしろオートファゴソームを完全に閉じるステップに必須であり、オートファゴソームの内膜の効率的分解に重要な役割を果たしていることが示唆された。
- [情報拠点注] オートファジー和文解説
- 「オートファジーを長き眠りからめざめさせた酵母」荒木保弘・大隅良典. ライフサイエンス領域融合レビュー
2012年9月19日. - オートファジーとは?(MBLライフサイエンスWebサイト)
プロテアソーム系と並ぶ主要な細胞内分解機構;オートファジーの制御機構;APG/ATG遺伝子の発見;Atg蛋白質群とその機能(Atg1からAtg36までの一覧表);オートファゴソームの形成に関わる5つの複合体(ユビキチン様因子Atg8の結合反応系;ユビキチン様因子Atg12の結合反応系;Atg1蛋白質キナーゼ複合体;Vps34 PI3キナーゼ複合体;Atg9とAtg2-Atg18複合体);増え続けるオートファジー関連因子;Atg蛋白質の局在;APマーカー:Atg8/LC3;抗LC3抗体:オートファジーのモニタリングツール;LC3に結合して選択的分解されるp62;広がるオートファジーの世界 - 「オートファジー研究の現状と今後の展開」水島 昇(MBLライフサイエンスWebサイト)
オートファジーとは;オートファジー研究の現状;ヒト疾患とオートファジーについて;オートファジーを標的とした治療;今後の課題と展開(オートファジー因子のオートファジー経路以外での機能;オートファジーのモニター方法;オートファジー創薬の見通し)
- 「オートファジーを長き眠りからめざめさせた酵母」荒木保弘・大隅良典. ライフサイエンス領域融合レビュー
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