crisp_bio

論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

1. [レビュー] 次世代のCRISPR-Cas技術と応用
[出典] REVIEW "The next generation of CRISPR–Cas technologies and applications" Pickar-Oliver A, Gersbach CA. Nat Rev Mol Cell Biol 2019-05-30.
  • 主要なCRISPR-Cas遺伝子編集ツール概観
  • ゲノム編集技術の進歩:標的可能領域の拡大 (Cas9の拡張, Cas12a, CascadeとCas3);遺伝子編集の機構と利用 (NHEJとHDR;遺伝子削除, 遺伝子挿入, 転座, 塩基編集 (BE), ハイスループット機能喪失スクリーン, 分子レコーディング)
  • RNAを標的とするCRSIPR-Cas (RCas9, Cas9オーソログ, Cas13)
  • 遺伝子調節 (CRISPRi, CRISPRa, エピゲノム編集)
  • Cas9活性調節 (化学誘導, 光遺伝学の利用)
  • dCas9応用の広がり (ノンコーディングゲノムアノテーション, クロマチン構造およびタンパク質の相互作用解析, 可視化)
  • 生物学医学への応用 (前臨床遺伝子治療, 臨床への展開)
  • 結論と展望
2. [レビュー] CRISPR/Cas9技術の進歩 - 癌研究と癌療法への応用と課題
[出典] REVIEW "Advancements in CRISPR/Cas9 technology—Focusing on cancer therapeutics and beyond" Mirza Z, Karim S (King Abdulaziz University). Semin Cell Dev Biol 2019-05-31.
  • CRISPR/Cas9の基本;p53とCRISPRの関係;癌関連遺伝子同定;CAR T療法;in vivo癌モデル作出;KRASを標的とする癌療法;臨床試験の動向 (https://clinicaltrials.gov/準拠);オフターゲット編集のミニマム化;生命倫理
3. Cas9 RNPをAcrIIA4で検出する
[出典] "Use of anti-CRISPR protein AcrIIA4 as a capture ligand for CRISPR/Cas9 detection" Johnston RK [..] Timlin JA, Harper JC. Biosens Bioelectron 2019-05-31.
  • ゲノム編集技術の開発にあたり、細胞内のデリバリーされたCas9やCas9 RNPの検出が必要になる。Sandia National Laboratoriesの研究グループは、抗体に替えてanti-CRISPRタンパク質を利用することで安価・簡便でスケーラブルな検出法を開発した。システインをリンカーとしてAcrIIA4をアリールジアゾニウムケミストリーで機能化したガラス状炭素電極に固定し、CRISPR/Cas9 RNPを電気化学的分析、蛍光分析および比色分析により高感度で検出する。
4. タイプV-A anti-CRISPRタンパク質 (AcrVAs)がCRISPR-Cas12aを阻害する構造基盤
[出典] "Structural Basis for the Inhibition of CRISPR-Cas12a by Anti-CRISPR Proteins" Zhang H, Li Z [..] Chang L (Purdue University). Cell Host Microbe 2019-05-30. 構造データ [EMDB ID] EMD-0449, -0447, 0446, -0445, -9398, -20132 および -20182;[PDB ID] 6NME, 6NMD, 6NMC, 6NMA, 6NM9 および 6OMV
  • クライオ電顕法によりLbCas12a-crRNA-AcrVA1複合体の構造を分解能3.5 Åで再構成し、AcrVA1がPAMをミミックし、ヘリックスα2におけるRNase活性サイトによってcrRNAを切断する機序を明らかにした。
  • AcrVA4の二量体とLbCas12a-crRNAの複合体構造も分解能3.3 Åで再構成し、AcrVA4がCas12aのコンフォメーション変化を阻害することでcrRNA-DNAヘテロ二本鎖の伝播を+8の位置で停止させる機序を明らかにした。
  • AcrVAs関連crisp_bio記事:2019-04-03 Cas12aエフェクタに対抗するanti-CRISPRタンパク質 (Acrs)の独特な阻害機構
5. CRISPR/Cas9技術を介したHLA遺伝子の精密編集により、HLA-B*38:68Qの発現レベルを特定
[出典] "Integrate CRISPR/Cas9 for protein expression of HLA-B*38:68Q via precise gene editing" Yin X, Reed EF, Zhang Q. Sci Rep 2019-05-30.
  • 細胞表面にHLA分子が発現しているか否か判然としないHLAアレルの表記にはquestionableに由来するQが付される。UCLA Immunogenetics Centerは、ホモ型HLA-B*38:01:01:01 EBV B細胞株のCRISPR/Cas9遺伝子編集により、ヘテロ型HLA-B*38:68Q/B*38:01:01:01と、ホモ型HLA-B*38:68Qを作出し、それぞえれの遺伝子発現解析から、HLA-B*38:68Qを低発現HLAアレルと同定した。
6. Cas9オーソログによるDNAメチル化を比較
[出典] "Active fusions of Cas9 orthologs" Josipović G, Zoldoš V, Vojta A. J Biotechnol 2019-05-31.
  • 6種類のdCas9 (dpCas9をはじめとして、dCjCas9, dNmCas9, dSt1Cas9, dFnCas9およびdSaCas9)とDNAメチル基転移酵素DNMT3Aの融合によるDNAメチル化を評価し、SpCas9, SaCas9およびCjCas9の3種類だけが活性を維持することを見出した。また、SaCas9 (CjCas9よりもPAMが単純)とSpCas9のいずれもN末端にDNMT3Aを融合する方が、標的DNAのメチル化により有効であることを同定した。さらに、コンストラクトの両端にNSLを融合することで、細胞核への送達効率が向上することも同定した。
7. CRISPR-Cas9ゲノム編集により、Clostridioides difficileのエリスロマイシン感受性株を作出
[出典] "Generation of a fully erythromycin-sensitive strain of Clostridioides difficile using a novel CRISPR-Cas9 genome editing system" Ingle P [..] Minton NP. Sci Rep 2019-05-30.
  • University of Nottinghamと上海生命科学研究院の研究グループの成果
8. ゲノムスケールのCRISPRaスクリーンにより、Zikaウイルス感染から防御する宿主遺伝子IFNL2とIFI6を同定
[出典] "A CRISPR activation screen identifies genes protecting from Zika virus infection" Dukhovny A [..] Sklan EH. J Virology 2019-05-29.
  • イスラエル・独・仏・米の共同研究グループの成果
  • 関連crisp_bio記事:CRISPRメモ_2018/09/18 [第1項] CRISPRスクリーンにより、フラビウイルス属の複製を阻害する小胞体関連遺伝子IFI6を同定
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