[出典] "Worldwide CRISPR patent landscape shows strong geographical biases" Martin-Laffon J, Kuntz M, Ricroch AE. Nat Biotechnol 2019-06-04.
University of Grenoble AlpesとParis-Sud Universityのチームが CRISPR特許の動向を分析し、技術の進歩、応用分野の多様化、および地政学的変化を読み取り、Nature Biotechnology誌から発表した。また同誌で、バイオテクノロジーへの投資を急速に拡大した中国の躍進と、CRISPR遺伝子編集作物が旧来のGMOとして扱われることになった欧州の低迷を指摘した。
データ源
- はじめに、Orbit Intelligence、PatentPulseおよびPatent Lensの3種類のデータベースにおいて優先日 (Priority date) 2017年12月31日までの範囲で、CRISPR OR Cas9 OR Cpf1 OR gRNA(s) OR sgRNA(s) OR “RNA(s) guide(d)” OR “guide(d) RNA(s)”の条件で検索した。Cas9とCpf1以外のヌクレアーゼでも検索したがそのヒット結果は、先の条件での検索結果に含まれるか偽陽性であった。
- 次に、ヒット結果を精査し、2,072件のパテントファミリーについて、カテゴリ(家畜、植物、医療、代謝工学などの産業利用、技術改良、in vitro実験用など)とサブカテゴリを割り振り直したマスターテーブルを用意した。マスターテーブルには、タイトル、アブストラクト、出願国、発明者、出願人、優先日、公開日、特許番号および文書番号を含むが、特許が付与されたか否かのデータは含まれていない。
出願国と出願機関のランドスケープ
- 出願は28ヶ国からあり、米国と中国がそれぞれ872件と858件と突出し、欧州各国194件、韓国75件、日本48件と続いた。経年変化を見ると、2016年に中国由来特許件数が米国由来を上回っていた。
- 特許が出願から18ヶ月経過後に公開されることになっているが、中国の特許はこれよりも早めに公開される傾向があることを勘案すると、米国、中国、欧州、韓国、日本がそれぞれ47.8%、34%、10.4%、3.8%、2.6%という数字にもなったが、いずれにしても米中が他を圧倒している。
- 機関別でみると、米国のMIT 113件、Harvard College 109件 (MITとの共同含む)、Broad Institute 86件 (MITとの共同含む)、UC 73件、Editas Medicine 43件などに対して、中国からは、農業科学院 182件、中国農業大学 35件に、上海生物科学研究所、上海交通大学などが続いた。民間企業では、DuPont-Pioneerが20件と突出していた。
技術分野のランドスケープ
- 2,072件のうち942件がCRISPR技術改良のカテゴリに入り、医療カテゴリ554件がそれに続いた
- 医療カテゴリは100種類の疾患にわたり、癌研究分野では2015年以来設立された中国の'priavete' firms'を含む中国からが59%を占めた。ウイルス感染については、米国62件、中国41件であった。医療のその他のサブカテゴリ (遺伝子治療を含む)でも米中がそれぞれ134件と113件と支配的であった。なお、技術改良のカテゴリにも医療関連が含まれていることを勘案すると、医療に直接あるいは間接的に関連するCRISPR特許は、806件に達すると見積もられた。
- 産業利用のカテゴリでは、中国と米国がそれぞれ38.5%と33%を占め、植物カテゴリでは、中国60.5%に米国26%が続き、欧州は8%に留まった。
crisp_bio参考記事
- 2019-02-19 涌き出でるCRISPR論文と特許申請に溺れる
- CRISPRメモ_2018/10/24-1 [第4項目] [展望] Broad InstのCRISPR特許成立とした米国連邦控訴裁判所の裁定が意味すること
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