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科学分野の比較的新しい論文と記事を記録しておくサイト: 主に、CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム編集, エピゲノム編集, 遺伝子治療, 分子診断/代謝工学, 合成生物学/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野) の観点から選択し、時折、タンパク質工学、情報資源・生物資源、新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症、機械学習・AIや研究公正からも選択

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/11/08)
  1. [論文] CRISPR/Cas9によるヒトlncRNAのゲノムスケール機能喪失スクリーニングを実現
    • Corresponding authors: Xiaole Shirley Liu (DFCI); Wensheng Wei (BIOPIC, Peking U.)
    • ヒトlncRNA(ヒト長鎖ノンコーディングRNA)の機能喪失スクリーニングは、タンパク質コーディング領域の機能喪失スクリーニングのように単純ではない。後者については、特定の表現型に相関する遺伝子のコーディング領域を標的とするsgRNAsのプール型ライブラリーを、細胞増殖や特定のマーカーをリードアウトとして、ハイスループットでスクリーンする手法がすでに広く用いられている。しかし、前者には同じ方法が有効ではない。ノンコーディング領域への1種類のgRNAによるindels誘導は、多くの場合機能喪失を引き起こさないからである。
    • 一対のgRNAs(paired-gRNA: pgRNA)を利用した大規模なゲノム領域を削除することで個々のlncRNAの機能を推定する試みもなされてきたが、そのハイスループット化は実現していなかった。
    • 研究チームは今回、pgRNAのプール型レンチウイルス・ライブラリーを効率的に調整し、ヒトlncRNAのゲノムスケール機能喪失スクリーニングを実現した。主として高HCV 複製感受性株Huh7.5細胞を対象として実験を進め、HeLa細胞でも実験を行った。
      • 癌およびその他の疾患に関与することが知られているあるいは疑われているおよそ700種類のヒトlncRNA遺伝子を標的とするpgRNAライブラリーを構築。一対のgRNAsの一方は、バーコードとしても利用。
      • ヒト癌細胞の増殖を亢進あるいは抑制するlncRNAs遺伝子を51種類同定し、その9種類について遺伝子ごとのpgRNAsを増やしたCRISPR/Cas9によるゲノム領域削除、機能レスキュー、CRISPRaまたはCRISPRi、および遺伝子発現プロファイリングによって、検証。
  2. [プロトコル] 哺乳類細胞のゲノム工学のためのアデノ随伴ウイルス(AAV)によるCRISPR/Casシステムの送達
    • Corresponding author: David V. Schaffer (UC Berkeley)
    • 基礎研究にも臨床応用にも有用な安全で高効率なAAVによる送達法の詳細プロトコル
  3. [論文] 自己開裂リボザイムそしてまたはtRNAを組み込んで、CRISPR技術による多重かつ組織特異的遺伝子編集を実現
    • Corresponding author: Renzhi Han (The Ohio State U. Wexner Medical Center)
    • gRNAsを自己開裂リボザイム(ribozyme)そしてまたはtRNAでgRNAsを多重に接合する手法を開発
      • U6プロモーターで多重gRNAsを同時に発現させることで、ヒト細胞とマウス細胞において、ジストロフィンとミオシン結合タンパク質Cの遺伝子編集を実現。
      • 同じgRNAs多重化手法とdCas9−VP64またはdCas9-p300coreと組み合わせて、フォリスタチン(follistatin)の転写を活性化
      • さらに、U6プロモーターをRNAポリメラーゼⅡ (pol II) プロモーター(組織非特異的CMVまたは骨格筋/心筋に特異的なMHCK7)に変えることで、多重gRNAsを組織特異的に発現可能なことを実証。本手法は、組換えアデノ随伴ウイルスのカーゴ容量が限られているin vivo 遺伝子編集に有用。
  4. [論文] GM食品におけるCas9は、食物アレルギーを引き起こしそうにない
    • Corresponding author: 中島 治(国立医薬品食品衛生研究所)
    • 近い将来CRISPR/Cas9技術による遺伝子組換え作物が広がることが予測される。この育種においてバッククロスを経ない場合、理論的には作物ゲノムに取り込まれたCas9遺伝子由来のペプチドが組換え作物の中で産生される可能性がある。そこで、Cas9とCas9遺伝子にコードされるペプチドの免疫原性を、Cas9の消化とペプチドの食物アレルゲンの観点から評価した。
    • 天然あるいは熱変性させたCas9はin vitro で胃液により急速に消化された。ペプチドと食物アレルゲンの相同性については、8塩基完全一致で探索した結果、ヒトあるいはトウモロコシにコドン最適化したCas9由来ペプチドは一致が見られなかった。大豆にコドン最適化したCas9由来ペプチドのうち1種類がパンコムギのセリンカルボキシペプチダーゼ2と一致したが、このアレルゲンのエピトープは現時点では不明である。
  5. [レビュー] 植物免疫工学:CRISPR/Cas9によってウイルス抵抗性を付与する
    • Corresponding author: Magdy M. Mahfouz (King Abdullah U. of Science and Technology)
    • イントロダクション(植物ウイルス;ジェミニウイルス;ウイルス制御戦略;ゲノム工学);ウイルス抵抗性をもたらすゲノム工学;CRISPR/Cas9によるDNAウイルス抵抗性付与;CRSIPR/Cas9によるRNAウイルス抵抗性付与;応用例;今後の課題
  6. [NEWS] 植物ゲノム・ハッカー、より良い作物改良法を追い求める
    • Author: Heidi Ledford (Nature reporter).
    • 10月遅くにロンドンに集結した作物エンジニア(crop engineers)の達成目標は野心的であった:コメの節水化; 穀類の省肥料化;光合成強化によるキャサバ改良
    • ゲノム情報は蓄積されてきたが、CRISPR/Cas9技術の適用が可能になっても植物ゲノムの改変は困難であり、形質転換に成功した僅かな細胞から植物体を再生することも困難である。2016年9月に米国NSFは形質転換法の研究開発に1,500万ドルを投資すると発表した。
    • Agrobacterium tumefaciens を利用した形質転換はモデル植物のArabidopsis thaliana には有効であるが、多くの作物には有効でなく、また、規制上A. tumefaciens は植物病原菌とみなされている問題もある。遺伝子銃(gene guns)は、トウモロコシに有効であるが、小麦やモロコシには有効でない。
    • 細胞壁を消化する酵素を利用してプロトプラストの形質転換をより速くより精度よく実現するロボットが開発され遺伝子導入は容易になってきた。一方で、植物体再生は旧態依然であるが、遺伝子群のオン・オフを調節することで再生過程も容易にする試みがなされている。
  7. [論文] HER2 遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9が、ドミナントネガディブ作用を介して乳癌細胞増殖を阻害する
    • Corresponding authors: William Sun (Inst. Bioengineering and Nanotechnology, Singapore)
    • HER2 遺伝子のエクソン(eons)を標的とするCRISPR/Cas9システムによって、HER2 遺伝子座が増幅している乳癌細胞株の細胞増殖を阻害。この効果はPARP阻害剤によって亢進。
      • 予測に反して、CRISPRが誘導した変異は、HER2タンパク質のレベルに大きな影響を与えず、HER2下流のシグナル伝達MAPK/ERK経路に干渉するドミナントネガディブ作用を介して細胞増殖を阻害することを同定。
      • CRISPR/Cas9システムによる癌遺伝子の編集が不十分でもドミナントネガティブ作用を介した効果を期待できる。
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