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論文・記事紹介:CRISPR生物学・技術開発・応用 (ゲノム工学, エピゲノム工学, 代謝工学/遺伝子治療, 分子診断/進化, がん, 免疫, 老化, 育種 - 結果的に生物が関わる全分野); タンパク質工学;情報資源・生物資源;新型コロナウイルスの起源・ワクチン・後遺症;研究公正

(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 2016/11/10)

  1. [レビュー] 遺伝子治療に向けたウイルスに依らないヌクアレアーゼ送達法
    • Corresponding author: Qiaobing Xu (Tufts U.)
    • メガヌクレアーゼ、ZFNs, TALENs、およびCRISPR/Cas9は、精密で選択的なゲノム編集を可能にしたが、臨床に応用するには、安全で効率良く標的細胞へ送達する手段が課題となっている。今回、Cas9/sgRNAリボ核タンパク質(RNPs)の送達を主な対象として、ウイルスを使用しない送達法の動向をレビュー。
    • [構成] プログラム可能なヌクレアーゼによるゲノム編集;安全で効率が良く細胞核に送達するという課題;エレクトロポレーションハイドロダイナミック・インジェクション;細胞膜透過ペプチド(cell-penetrating peptides: CPP);非ウイルス・ナノ粒子;iTOP (induced Transduction by Osmocytosis and Propanebetaine)法;課題(in vitroで高評価であっても、in vivo での安全性と効率が保障されない;引き続きナノ粒子の研究開発が必要;TALENとCas9の免疫原性の検証も必要;NHEJ修復応答に対して相同組換え修復応答を亢進する手法の開発が必要)
  2. [論文] CRISPR/Cas9によるマウスゲノム由来神経ペプチド遺伝子エンハンサー削除に伴うオフターゲット作用の解析
    • Corresponding author(s): Alasdair MacKenzie (U. Aberdeen)
    • 研究チームは、比較ゲノミクスによってヒトゲノムにおいて、ガラニン(galanin)CB1受容体のような神経ペプチドの組織特異的発現に関与する調節エレメントを推定していたが、調節エレメントを効率的に削除する技術が存在しなかったため、そのin vivo 機能の解析が困難であった。
    • 今回、マウス1細胞期胚にgRNAとCas9 mRNAをマイクロインジェクションすることで、短期間で標的エンハンサーをノックアウトしたマウス系統変異を実現し、オフターゲット作用を評価した。設計・使用したgRNAsは4種類であった。
    • バイオインフォマティクスによってオフターゲット作用が起こる可能性が高いサイトを推定し、該当するファウンダー変異マウス3系統のゲノムサイトをPCRし、マウスゲノム配列に対してblastすることでオフターゲット編集の有無を判定する手法で、オフターゲット作用は見出されなかった。
  3. [論文] CRISPRスクリーニングによるシタラビン(Ara-C)耐性AMLの耐性遺伝子とAra-C耐性AMLが感受性を示す薬剤の同定
    • Corresponding author(s): 倉田盛人 (U. Minnesota/東京医科歯科大学)
    • 急性骨髄性白血病(AML)は、導入療法の主剤Ara-Cに対して耐性を獲得する。研究チームは今回、ヒトU937細胞にゲノムワイドのCRISPRライブラリーを当て、続いてAra-Cに暴露することで、互いに独立にAMLにAra-C耐性をもたらす遺伝子を同定した。
      • 全てのAra-C耐性クローンに、Ara-C代謝活性化における律速酵素であるデオキシシチジンキナーゼ(deoxycytidine kinase, Dck)を標的としたgRNAsが存在した。続いて、DCK 遺伝子改変を回避するためにサイレント変異の導入で作出したgRNA抵抗性DCK cDNAを組込んだゲノムワイドCRISPRスクリーニングを繰り返し、SLC29Aの欠損がAra-C耐性をもたらすことを見出した。
      • Ara-C耐性をもたらすDck欠損が起こったAMLがAra-C以外の薬剤に感受性を示すか、BXH-2マウス白血病細胞から誘導したDck欠損細胞において、446種類のFDA認可薬を対象とするCRISPRスクリーニングを行い、プレドニゾロン(prednisolone)に対する感受性が増すことを見出した。
      • DCKネガティブAMLに対するアジュバント療法としてプレドニゾロンが有望である。
  4. [論文] Cas9のコンフォメーションと活性が、tracrRNAとcrRNAの双方に調節される
    • Corresponding authors: Sangsu Bae (Hanyang U.);Seong Keun Kim (Seoul National U.)
    • 2種類のガイドRNAs(tracrRNAとcrRNA)がCas9のヌクレアーゼ活性を調節する分子機構を単分子スペクトロスコピー(FRET)によって詳らかにした。
    • 活性なapo-Cas9よりも熱力学的に安定な不活性なCas9のコンフォメーションを新たに見出した。TracrRNAは、Cas9が不活性コンフォメーションをとることを阻害し、Cas9:gRNA複合体へと誘導する(参考図 Figure 5の左の部分)。

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    • Cas9:gRNA複合体において、R-loopが広がる間におけるRNA-DNAヘテロ二本鎖のサブコンフォメーションを見出した(参考図 Figure 2-aとFigure 5の右下の部分: crRNAが標的DNAに結合後、Open conformationを経てZipped conformationへ)。このサブコンフォメーションは、crRNAと標的DNAの相補性で制御される。
    • Zipped conformationのエネルギー障壁をこえることができないオフターゲット配列はPAM近位にのみ結合が可能であり切断されない。
  5. [レビュー] 植物ゲノム編集に向けた多彩なCRISPRシステムの進化
    • Corresponding author(s):Yiping Qi (East Carolina U.)
    • CRISPRシステムの発現法:Pol II:Cas9とPol III:gRNA;Pol II::Cas9とPol II::gRNA;Pol II Cas9:gRNA
    • CRISPR-Cas9の送達法:アグロバクテリウムのT-DNA組込み;ウイルスによる送達;プラスミドによる送達;リボヌクレオチドタンパク質複合体送達;RNA送達
    • オーソゴナルなCRISPRシステムの組合せによる標的拡張
    • CRISPR-CPF1は植物ゲノム編集に有用か
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